目黒発 vol.31|調査・研究/発行物|NTT ADVERTISING, INC.

調査・研究/発行物

目黒発 vol.31

SPECIAL REPORT
「市民発信情報」を自治体広報に活かす
COLUMN
広報はサービス業である 第4回
舞台裏を明かす努力を
OPINION
デジタルネイティブとの、アナログコミュニケーション。
中村 泰子 株式会社ブームプランニング 代表取締役社長
AD LETTER
編集後記
SPECIAL REPORT
「市民発信情報」を自治体広報に活かす

ボトムアップとイノベーションで、コミュニケーションの圧倒的な拡大を
-横浜市「横浜ストリーム」のケース-

2010年7月から横浜で始まった市民発信型メディア「横浜ストリーム」が注目を集めている。NPO、企業、市の協働でデジタルサイネージなど情報発信のプラットフォームを提供、同時にICTに関する人材育成にも注力し、地域市民の情報発信力を高めるというプロジェクトである。横浜の情報や魅力を外部に伝える役割を、地域住民の自発性に委ねるという試みである。ブログやツイッター等のソーシャルメディアによってあらゆる人々の情報発信力、発信意欲が増している時代。発言する「場」の演出次第で、企業に有益な情報がユーザーの側から自発的に発信されるとも言われている。企業と「トリプルメディア」の関係性が話題となって久しいが、「横浜ストリーム」の事例を通じて、新しいコミュニケーションをつくる「場」の演出手法と企業姿勢を探ってみる。

「場」の枠組みだけではなく、「場」の質を高める人材育成を重視

「横浜ストリーム」は、一般市民である地域リポーター自らが横浜の情報や魅力をデジタルサイネージなどのメディアへ投稿するという仕組みを活用し、ボトムアップによる地域情報の潮流をつくり、活性化を促すというプロジェクトである。デジタルサイネージだけではなく、Webやインターネットテレビなど様々な媒体に市民が企画制作した地域情報を流し、活用していく仕組みを構築・検討している。また、取材の仕方や動画および記事の作成方法、ツイッターや地域SNSの活用方法などを学べる講座やワークショップを開催して地域リポーターを養成、横浜の魅力や課題など個々人のオピニオンを広く伝えるための人材育成にも注力している。

NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボでは、「横浜ストリーム」の他にも、横浜地域SNS「ハマっち!」や、横浜の過去の写真を市民から募集して作るアーカイブサイト「みんなでつくる横濱写真アルバム」など、様々なメディアを通じて横浜のコミュニティ活性化に取り組んでいる。

主催する「横浜地域情報発信協議会」には、テレビ神奈川、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ、横浜市共創推進事業本部などが参加、横浜に住む幅広い人々の手によって推進されている。このうち共創推進事業本部は、民間からの事業提案を受ける窓口として3年前に横浜市が設けた。総務省の補助金制度「ICTふるさと元気事業」へ横浜ストリームを推薦するという立場で同事業に参画している。また横浜市では、デジタルサイネージを活用することが災害時の防災情報を発信する情報基盤の強化につながるかもしれないという期待もあり、広報活動の一環として捉えていると言えそうだ。当初はデジタルサイネージのシステムづくりがプロジェクト内で先行していたが、市の意向で人材育成を強化することになった。「何を流すかが最も難しい問題ですから、コンテンツをつくる人材育成を先行させてほしいと依頼しました。この事業における横浜市の一番の価値は、ICT人材を地域に増やしていただくことです」(横浜市共創推進本部 共創推進課 担当係長 杉山昇太氏)。市の広報活動という視点で見ても、情報発信できる人材、スキルの高い人材輩出を継続的に行うことが重要と言えそうだ。

写真:杉浦裕樹氏
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ
代表理事 杉浦裕樹氏

民間事業者側から市へアプローチがあって成立したプロジェクトだが、その下地として、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの活動に、複数の市職員が関心を持ちながら関わってきていたという経緯もあった。国の認可を得るためだけの協働ではなく、地域住民同士としてのつながりが前提にあって醸成した事業なのである。

ICTを高めることが、自治体広報の機能向上にもつながる

横浜ストリームのコンセプトスローガンは、「発露せよ! ヨコハマ。」。様々な立場や年代の市民が「横浜をより良くしたい」という思いを共有し、個々の視点を生かした情報を発信して、新たなつながりをつくっていくことが、地域を変える第一歩になるというのである。このコンセプトを実現するために、「地域レポーター養成基礎講座」をはじめ、「テレワーカー講座」、「デジタルサイネージ講座」、情報発信技術を学べる「アドバンスト講座」などを開講、昨年7月からの半年間で延べ600人もの受講生を集めている。

人材育成に注力している現時点では、横浜市の広報活動にどのような好影響を与えるのかは定かではないが、発信する市民が増えれば必然的に見る人も増えるという考え方を大事にしている。「ICTのリテラシーが高い市民が増える、という可能性については想像の域を出ませんが、地域にある面白いことを発信できれば、発信する人も見る人も地域に愛着がわくはずです。そういう小さなことが、観光面を含む地域の様々な魅力を市民が自発的に広報してくれることにつながるかもしれません」(杉山氏)。

つまり、市民の一人ひとりがICTを活用して地域を楽しみ、そこから活性化につながることが一番のメリットというスタンスなのである。

もちろん将来的には、広報の補完機能として役立てたいという期待もある。特に、防災広報の面で有効だ。行政に入る降雨量や河川水位など多くのデータをデジタルサイネージやWeb上で公開して発信するだけでなく、実際に災害の現場で何が起きているのか、川が溢れているのかという情報が素早く伝わる仕組みに育てようとしている。文字や音声情報で避難勧告を知るよりも、観測値や映像情報などの生の情報を受け取った市民が自分達で判断して、いち早く避難することができれば、防災時の広報としてより良い機能を果たしたと言えるだろう。

写真:杉山昇太氏
横浜市共創推進本部 共創推進課
担当係長 杉山昇太氏

避難勧告のように行政からの通達が出るのを待つのではなく、地域住民が自分で判断できる情報を強化していくこと。これこそ情報網が発達した現代における自治体広報の役目かもしれない。そのために、市民が、川の様子など災害現場を撮影したら、それをリアルタイムで発信できる場所があるということも重要になる。行政にとってもこうした現場のきめ細かい情報が多数入ってくるほど広報機能の向上が期待できるからである。「情報が増えれば総合的に判断できるようになります。判断にどうしても時間のかかるケースもあり、特に避難勧告のような外に出す情報の場合は慎重です。生の情報が次々とアップされる仕組みや人材の育成は、自治体広報という視点でも強みになるかもしれません」(杉山氏)。

行政の情報に加え、情報発信能力、編集スキルの高い地域リポーターの力を得て、より充実した住民サービスを図るのが、この事業における横浜市の狙いなのである。

ボトムアップの情報発信で発信内容のコントロールはタブー

住民発信の情報が増えれば、コンテンツ内容の正確性や公平性などの課題も出てくる。事業主体のひとつNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボが運営する、横浜のビジネス&カルチャーニュースサイト「ヨコハマ経済新聞」は、自分たち地域住民にとって面白いニュースを独自の基準で選んで発信しているが、そのスタンスは「横浜ストリーム」でも必要だという。いくつもの決裁を経て発信する行政の情報では、代わり映えしないコンテンツになる恐れがある。「見てもらえる情報にするために大事なのは“人”。いくらいいシステムでも、“人”がいなければ意味がない」というのが杉山氏の考え方。それを踏まえて、コンテンツ内容のリスクを回避するために重視すべきなのが人材育成というわけである。「システムを先につくっても、市民メリットにすぐにはつながっていきません。まず、情報を流す人がいて、“こういうシステムがほしい”という声に応えて、一緒につくっていかないと結局使われないものができあがってしまうでしょう」(杉山氏)。

横浜コミュニティデザイン・ラボの代表理事である杉浦裕樹氏は、「横浜ストリーム」を、「行政」と「地域住民および企業」をつなぐ場と位置づけている。「行政も、地域住民も、企業もすべて市民です。ソーシャルメディアのひとつである横浜ストリームの活用に大切な3か条は、(1)『つながり』づくりを意識する、(2)『変化に敏感』である、(3)『あせらず、たゆまず、おこたらず』に推進することだと考えています。そのつながりの中から、どうしても情報の制限や限界が伴ってしまう行政広報をフォローしていければいいと思っています」。

住民発信による情報、ボトムアップの情報は、その内容をコントロールしようという意識を持ってはならないというのが両者に共通した意見であった。企業広報に置き換えるのであれば、ユーザーとのより良い接点づくりに終始するのが基本的な姿勢と言えるだろう。

参画者のすべてが利他的であることが、ボトムアップの潮流になる
「横浜ストリーム」では、一般市民同士のインタビュー・ワークショップなどを通じて、情報発信能力を高める講座を継続的に開催している。ワークショップの成果は「YouTube」などで見ることができる。

「横浜ストリーム」は、情報発信メディアの創出と同時にビジネス機会の創出も期待されている。将来的には地域リポーターが仕事をできる場をつくるのが狙いだが、現段階でも既存のパソコンスクールにリポーター育成コースを設置するなど、市民だけでなく地域の事業者にとっての機会の創出を指向することも、行政が関わる意味のひとつであるという。「ネット関連事業は在宅でできる仕事ですから、一般的雇用だけでなく、様々な働き方に応じた収入の手段もつくりたいと思っています。今後、多くの企業に地域でスキルアップした横浜のICT人材を活用していただきたいですね」と杉山氏。人口370万人を抱えて国内最大の市である横浜であっても、財政問題や人材面から大きな危機感を抱いており、いかに市民・企業・NPOとの共創を実現していくかが行政としてのミッションとなっている。「ボトムアップとイノベーションが横浜のコミュニケーションに欠かせないキーワードになっています。そこを強みとしてすすめていくことで社会的起業などの新しい活力も生まれ、市民メリット、企業メリットにつなげていくことができれば、施策としても最良の結果となるでしょう」(杉山氏)。

市民意識が高いとも言われる横浜だからこそ、このようなボトムアップの情報発信に興味関心を持つ人たちが多いのかもしれないが、参画する企業、NPO、行政がいずれも利他的なスタンスでいることが住民参加のハードルを下げているのではないだろうか。こうした先進的な広報姿勢は企業としても参照すべきで、今後の広報面での成果に期待したい。

横浜ストリームに学ぶ「『市民発信情報』を自治体広報に活かす」3つのポイント
1発信者が楽しんでこそ、発信する人も見る人もコミュニティに愛着を持つ
2情報操作はNG、ユーザーとの接点づくりに終始するのが運営者の基本姿勢
3参画団体すべてが利他的であることがボトムアップのハードルを下げる

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舞台裏を明かす努力を

エンタテインメント系企画集団「指南役」代表・草場 滋さんによる、「おもてなしの心」で企業広報を考えるコラム。

草場 滋(くさば しげる)  「指南役」代表
エンタテインメント系企画集団「指南役」代表。1995年「ソニー・アート・アーティスト・オーディション」入賞、98年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。近著に『一流の仕事人たちが大切にしている11のスタンダード』(実務教育出版)など。


舞台裏を明かす努力を
have a heart to heart talk

今年の正月、共同購入型クーポンサイト「グルーポン」で購入した某社のおせち料理が起こした騒動は、まだ記憶に新しい。

横浜の人気レストランが、定価21,000円の「3段33品の豪華おせち」を50%オフの10,500円で販売したところ、500人が購入。しかし―届いたおせちは、中身が見本と大きく違っていたり、そもそも遅配で大晦日のうちに届かなかったり、云々。騒動はネットを通じて瞬く間に拡散し、マスコミでも報じられた。グルーポンは謝罪コメントを発表し、レストランを運営する販売会社は購入者に全額を返金。同社の社長は責任をとって辞任した。

振り返ると、キャパシティオーバーを見通せなかった販売会社も、無理な価格設定を承認したグルーポンにも弁解の余地はない。当然だろう。だが、問題はそれだけだろうか。

料亭の「おせち」の舞台裏

騒動が発覚して、京都の企画会社「のぞみ」の藤田功博氏が、それに関して自身のブログに書いた記事がネット等で話題になった。それは、京都の料亭における、おせちの仕込みの舞台裏を明かしたもの。それによると、おせち用の食材は年末に需要が集中するため、価格が高騰する。利益が薄く、そもそもクーポン用の商品には適していないという話だった。それでも各料亭がおせちを仕込むのは、ひとえに日ごろのお得意さんへの感謝の印であると。

例えば、京都の三つ星料亭の「菊乃井」が毎年仕込むおせちの数は300程度。食材の仕入れ数、仕込みの手間などを考慮すると、それくらいが限界らしい。というのも、おせちの食材は日持ちしないものが多く、仕込みは年末ぎりぎりの29日の夜あたりから始めるしかない。しかも腐らせてはいけないので、一切暖房を入れず、極寒の調理場で行なわれる。ほぼ2晩徹夜し、31日の夕方に完成したおせちが配達されるのを見届けると、調理人たちは気絶するかのように、その場で眠り込んでしまうとか。

―記事を読んだ人たちの感想は、おせちにそれだけの手間がかかっていることに驚き、且つ調理人たちの“プロの仕事”に感心するものだった。私も同じ感想だった。いわゆる料亭のおせちは3万円を下らないが、そんな舞台裏を知らされると、その値段も頷ける。

さて、そうなると、先のグルーポンのおせちの値段が3段で1万円ちょっとというのは、あまりに安い。一店舗で仕込んでいることを考えると、もはや不可能な価格設定だ。どう考えても見本通りのおせちを仕込めるわけがない。

消費者にも責任の一端

思うに―今回の問題は、そんなおせちの舞台裏を知らない消費者にも責任の一端があったのではないだろうか。あまりに安すぎる商品は、必ず何か欠陥があると思わないといけない。世の中、そんなにうまい話があるわけがない。私も含めて、消費者自身、もう少し賢くなる必要があるのではないか。

更に言えば、おせちの仕込みにそれだけの手間がかかることを、生産者側も常日頃から発信すべきではなかったか。おせちに限った話ではない。日本には、長らくモノづくりに励んできた歴史がある。資源の少ない日本では、“人”と“技術”が財産である。だが、近年の価格競争のマーケットに忙殺されるあまり、その原点を疎かにしてはいないだろうか。もちろん、現場は真剣だろう。だが、プライオリティーとして、良質の商品を届けるには、それなりのコストがかかることを、組織として消費者に発信する努力を疎かにしてはいないだろうか―。

舞台裏を明かすことを野暮とした時代は終わった。今こそ、広報の出番である。

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大手化粧品ブランドの手軽な価格で買える「コンビニコスメ」。芸能人ではなく、ファッション誌の読者モデルをパッケージに登場させた「ヘアカラー」。いずれも若い女性から圧倒的な支持を集めたヒット商品だが、その商品開発に携わってきたのが「ブームプランニング」というリサーチ会社だ。1980年代後半から、「女子高生の口コミ」を中心に、独自の方法で市場調査や商品開発に携わってきた中村さんに、消費者の「マインド」をつかむノウハウを伺った。

写真:中村泰子

中村泰子(なかむら・やすこ)
1960年山口県生まれ。実践女子大学文学部英文学科卒業後、保険会社勤務を経て、1986年、女子高生の企画集団「SCAT CLUB of JAPAN」を設立し、キャラクターグッズの販売などで話題に。1988年、流行に敏感な女子高生の声を生かした市場調査や商品開発を行う「株式会社ブームプランニング」を設立。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代―東京・女子高生の素顔と行動』(講談社文庫)など。

「女子高生って、すごい」。アイデアとアンテナの宝庫

好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。歯に衣着せぬハッキリしたもの言いや、物事の本質を的確に捉えて言葉にする独特のセンス。私が「女子高生って、すごいかもしれない!」と気づいたのは、1985年ころのこと。知り合いの女子高生を集め、彼女たちが本当に「欲しい」と思うものはどんなものなのかなどをリサーチしてみたら、大人の頭からは思いもよらなかったアイデアや考え方が次々と出てきたんです。それが、女子高生と企業の間をつなぐ、現在の会社を立ち上げるきっかけとなりました。

当時の女子高生は、「団塊ジュニア」と呼ばれる世代。幼いころからモノを消費することに慣れ親しんできた彼女たちは、世の中にあふれる商品やサービスに対して貪欲でした。世代人口も多く、私たちのビジネスはすぐに注目を集めました。1990年代半ばから2000年代頭にかけて、「プリクラ」などのヒット商品を支えたのも彼女たちなら、「アムラー現象」を巻き起こしたのも彼女たち。ポケベルやPHS、携帯電話などの最新ツールに誰よりも早く飛びつき、使いこなしたのも女子高生でした。いわゆる「女子高生ブーム」です。「女子高生を制するものが、マーケットを制する」と言われた時代です。

考えてみれば、ハイティーンの女の子が独特のセンスや価値観を持っているのは、いつの時代も変わらない事実です。「親が選んで与えたもの」に囲まれていた子ども時代を卒業し、自分の選んだものをお小遣いで自由に買えるようになる年齢。おしゃれや美容にも興味を持ち始め、人間関係の輪もどんどん広がっていきます。「人にどう見られるか」が大切な年齢だからこそ、流行にも敏感で、あちこちにアンテナを張り巡らしています。女の子が人生で一番楽しくて、輝けるときですよね。そんな彼女たちの「マインド」を知ることは、時代のムードや消費者を知る絶好の手掛かりになるんです。

「最も賢い消費者」である女子高生は、今や、大人たちよりも堅実派

企業の担当者と女子高生たちを実際に会わせてみると、こちらがハラハラしてしまうような場面もたくさんありました。企業にとっては、技術の粋を集めた最新の自信作なのに、怖いもの知らずの女子高生たちは手にとった瞬間「この機能いらない!」とか「キラキラしてればいいってわけじゃない」と、バッサリ一刀両断するわけですから。でも、よくよく話を聞いてみると、彼女たちの意見は、ユーザーとして非常に的を射ていることが多いんです。友達同士で頻繁に情報交換をするので、他社の製品のこともよく知っている。しかも、限られたお小遣いの中から買うわけですから、コストに対しても敏感。いわば、非常に「賢い消費者」なんですよね。「どんなに機能が良くてもかわいくなくちゃダメ」とか、「ノンカロリー表示はもっと大きく」などと、具体的な改善点まで遠慮なく口にします。さらに、女子高生が驚異的なのは、自分たちにとって商品が「不完全」だと思ったら、独自にカスタマイズしてしまうパワーとバイタリティを持っていること。最もわかりやすい例が、ポケベル。ポケベルは番号を通知するだけで、今でいうメールのような機能はついていませんでしたよね。でも、当時の女子高生たちは、自分たちで数字に五十音を当てはめるルールを作り、数字の羅列だけで友人と日常会話をこなしていたのです。これは、他の世代ではまずできない技。女子高生たちが商品をどう使っているかを聞くと、既存の商品を改善するヒントが山のように出てくるのです。

そんな女子高生たちの発言が、以前とは大きく変わってきたのを感じ始めたのは、ここ5~6年のこと。特に、2008年のリーマン・ショック以降は顕著です。「お小遣いやアルバイト代の中から、毎月貯金している」とか、「金髪なんかにしたら、就職に影響する」と、将来に対する不安感を口にする子が非常に増えています。消費行動にしても、ただ目新しいというだけでは手を出さない。たった数百円のものでも、自分たちにとっての価値が値段に見合わなければ買わないで済ます。何か買うときは、事前にmixiで「これとこれどっちがいい?」とつぶやき、200~300人はいるマイミクからの反応を見たり、口コミサイトでまめにチェックしたり、あれこれ比較検討をしてから決める。大人よりもずっと堅実ですよ。そんな彼女たちを見ていると、これからの時代「ものを売る」ということは、本当に大変なことなんだと改めて実感します。

「マインド」を引き出すにはアナログなコミュニケーションが重要
写真:中村泰子

女子高生を対象にしたアンケート調査というと、携帯電話やメールで行っていると思われることが多いのですが、私たちがこだわっているのは、フェイス トゥ フェイスのコミュニケーションができるグループインタビューや、手書きのアンケートやレポートなどのアナログな方法です。彼女たちの消費マインドの底にある「本音」を引き出すには、アナログなコミュニケーションが最も有効だと考えているからです。

携帯電話やメールで詳しい意見を集めるときは、一斉メールで送ったりはしません。担当する若い女性スタッフが、ひとりひとり、個別にメールを送ったり、電話をかけたりしてお願いしています。

もちろん、ビジネスライクに一斉メールでアンケートを送っても、回答は返ってきます。女子高生たちも賢いですから、「アルバイト」と割り切っても、そこそこの意見は送ってきてくれるはずです。でも、顔を知っていて、話したことのある相手から「あなたにぜひお願いしたいの」と頼まれたときに返ってくる回答とは、そのテンションがまったく違うんです。女子高生たちは、人と人とのつながりや、相手の気持ちに敏感。本当の気持ちが知りたければ、こちらも「本音を教えてほしい」と本気でかからないとダメ。また、メールだけだと、言葉のニュアンスや意味を取り違えたりする危険性もあります。「女子高生が仲間内だけの言葉使いをする世代だから」ということもありますが、大人同士でだって、同じことが言えますよね。

ですから、私は企業の方にも「聞き取り調査をするなら、担当者が直接会って、直接相手と話すべき」とおすすめしているんです。消費者と企業の担当者が直接対面できる場こそ、格好のPRの場であり、最も効果的なサンプル調査の場になるはず。

言葉の裏に隠された「マインド」を読み取るには、できるだけ「ダイレクト」なコミュニケーションを。それは、女子高生たちが私に教えてくれたひとつの「知恵」なのです。(談)

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編集後記

株式会社エヌ・ティ・ティ・アド コミュニケーションプランニング局
PR担当部長 島田実木雄

「目黒発」バックナンバー スペシャルレポートのテーマ一覧

近年の事業環境の劇的変化を受け、企業における広報活動の役割は大きく様変わりしてきたようです。広報活動の領域は、平時の広報と緊急時のそれに大別して考えることができますので、この枠組みで広報の現在を概観してみましょう。

まず、平時の広報に関しては、昨今のIT環境の進化に呼応し、従来のような公式HPでの情報提供とインバウンドeメールの受付といった間接的でスタティックな活動のみならず、特にツイッター等を中心とするソーシャル・メディアを用いた、体温が感じられるようなダイナミックなコミュニケーションに注目が集まってきており、成功事例もいくつか見られるようになりました。このような平時の木目細かいコミュニケーションのトーン&マナーが、当該企業に対する消費者イメージの向上に大きく影響を及ぼすようになってきています。

他方、緊急時の広報に関しては、特に今世紀に入り、品質偽装、リコール隠し、証券取引法違反、情報流出等多くの企業で多様な不祥事が続発しました。中には、緊急時広報の対応のまずさゆえに一層大型事件化したといったケースも思い当たりますし、逆に速やかにトップが前に出て適切な対応を講じることで事態を迅速に沈静化させたケースも思い出されます。本誌でも、石川慶子さんや草場滋さんをはじめとするコミュニケーションの専門家の方々による連続コラムで、緊急時における望ましい対処方法に関するノウハウやヒントをいくつもご提供させていただきました。

このような広報に関する様々な情報を提供させていただいてまいりました「目黒発」というメディアは、当社が広告会社としてクライアント企業の広報活動の支援を続ける中で、2005年11月に発刊し、本号で31号を数えます。時を経るにつれ、実に様々なテーマにスポットをあてて制作してまいりました。バックナンバーは、当社の公式HP(http://www.ntt-ad.co.jp)で今でもご覧いただけます。また、お問い合わせいただければ、紙面のご提供も若干数であれば可能ですので、必要に応じてお申し出ください。

昨今、広報、PR、マーケティング、プロモーション等、顧客に対するコミュニケーションの機能は従来と異なり渾然一体となってきています。今後は、このような市場動向に鑑み、約6年に渡ってご愛読いただいてまいりましたこの「目黒発」を当社のマーケティング系刊行物である「先事新聞」に合併いたします。そして、両誌をよりパワーアップし、広報・PRといった領域も含んだ企業コミュニケーション領域全般に関して総合的に情報提供させていただきたいと考えています。これまでご愛読いただいた読者の方々には、新しく生まれ変わる「先事新聞」や「空気読本」などで再びお会いできることを楽しみにしております。

最後に、当社のPRとして、当社が長らく継続実施している大型コミュニケーション調査施策である「デジコム調査」の最新版の概要とトピックスをお知らせさせていただき、ひとまずはこのフォーマットでの「目黒発」のお別れとさせていただきます。

写真:スマートフォン所有意向理由
<デジコム調査の概要>
1.調査目的:通信利用に対する生活者意識と行動の基本特性を全国規模で把握し、当社のクライアントサービス活動に資する
2.調査地域:全国主要6都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)
3.調査方法:郵送留置
4.対象者:15~65歳の男女
5.質問項目:通信コミュニケーションに関連する質問約90問
(2010年度実施分実績)

当社は、クライアント各社様をはじめとした多様なステークホルダーの皆様に対して、より充実したコミュニケーションを続けていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第31号(2011年2月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

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