調査・研究/発行物

先事新聞 vol.33「衝動ポチり買い」は、スマホ消費を牽引する!?

「衝動(ポチり)買い」は、スマホ消費を牽引する!?

スマホの普及率が5割を超えた今(※)、その可動性・利便性が、人々の購買行動に影響を与え始めている。最近では、リアルな店舗で商品を品定めし、最終的にはインターネットで購入するといった「ショールーミング」が存在感を増しているが、今、様々なショッピングスタイルが顕在化しつつあるようだ。

先日、我々が実施した20代から30代男女を対象としたグループインタビュー調査の中で、ある興味深い購買行動が読み取れた。それは、多様なシーンにおけるスマホによる衝動買いであり、中でも特徴的なのは、仲間との会話が盛り上がり思わずその場で衝動買いしてしまうといったケースだ。例えば、女子会において演劇の話題で盛り上がり思わずその場でチケットを購入してしまったであるとか、飲み会の席で議論が白熱しその場で関連書籍を購入したであるとか、まるで備忘メモのように、その場で即決購入する機会が増えているのだという。Twitter、Facebook、LINEといったSNS上では、スマホによる衝動買いを指して「ポチる」「ポチった」などとツイートされているが、今後、こうした「衝動ポチり買い」はスマホ利用者間において定着していくのだろうか。

※NTTアド「デジタルコミュニケーションライフ調査/調査対象:15〜69歳個人男女8,000サンプル」によると、2014年5月時点で53.6%

(1)スマホ利用者の52.6%が「スマホによるネットショッピング経験者」

我々は、「スマホによる衝動買いの実態把握」をテーマに、インターネット調査を実施した。調査対象者は、10代から50代男女(居住エリア問わず)、回収サンプル数は1,000サンプルである。まず、「スマホによるネットショッピング」の条件についてだが、今回の調査では、購入品として、映像・音楽・ゲームソフト・アプリといった無形商品を対象外とし、有形商品に限定することとした。理由としては、スマホにおける無形商品の購入率は極めて高く、有形商品の購買行動とは明らかに目的やプロセスが異なると判断したためである。また、決済方法は、クレジット払い・代引き・電子マネー・銀行振り込み等を問わず、あくまでも「スマホ上で購入決定をした行為」とした。以上の条件のもと、スマホ利用者における「スマホによるネットショッピング経験者」の割合は52.6%と過半数に上り、コンテンツやアプリといった無形商品だけではなく、有形商品の購買行動も活発化していることが分かった。

(2)「衝動ポチり買い経験者」は、「スマホによるネットショッピング経験者」の37.0%

では、「スマホによるネットショッピング経験者」のうち、「衝動ポチり買い経験者」はどの程度いるのであろうか(グラフ1)。まず、スマホによるネットショッピングの行動パターンを複数提示し、「ネットサーフィンなどで偶然見つけて購入した」「友人や知人たちのSNSでの情報により衝動的に購入した」「友人や知人たちと実際に会って会話中に商品の話題が出て、盛り上がり衝動的に購入した」のいずれかを選択したユーザーを「衝動ポチり買い経験者」とした。その結果、「スマホによるネットショッピング経験者」のうち37.0%、スマホ利用者全体の19.5%が「衝動ポチり買い経験者」であり、新たな購買行動として顕在化しつつあることが分かった。中でも特徴的な「友人や知人たちのSNSでの情報により衝動的に購入した」「友人や知人たちと実際に会って会話中に商品の話題が出て、盛り上がり衝動的に購入した」を選択した、他者とのコミュニケーションの最中に「衝動ポチり買い」する経験者は8.1%に上り、後ほどデータを紹介するが、このニッチ層が極めて消費意欲旺盛であることが判明した。

調査概要
グラフ1 「スマホによるネットショッピング経験者」の「衝動買い経験者」の割合
(3)最も「衝動ポチり買い」する属性は、「スマホ経験5年以上の30代女性」

続いて、「衝動ポチり買い経験者」の属性について調べてみた(グラフ2)。まず、「衝動ポチり買い経験者」の割合が最も多い世代は30代の42.0%であり、10代から30代までは年齢が上がるにつれてその割合が上昇しており、可処分所得が影響していると思われる。しかし、40代になるとその割合は減少し、日常生活において「スマホによるネットサーフィン」「リアルやSNS上での友人や知人との交流」といった機会が相対的に少ないことが予想される。また、男女差で見ると、男性が32.4%であるのに対し、女性が41.6%と明らかに多く、女性はネットやクチコミ情報に敏感に反応していることが分かる。さらに、スマホの経験年数で見ると、年数が増えるにつれて「衝動ポチり買い経験者」の割合が多くなっていることから、必ずしも経験値を積むことが、購買行動を消極的にさせるとは限らないと言えよう。こうした結果から、最も「衝動ポチり買い」している属性とは、「スマホ経験年数が5年以上の30代女性」である。商品比較情報や価格に敏感な層であり、他者との情報共有が活発な層と予想される。

グラフ2 「衝動買い経験者」の属性
(4)「衝動ポチり買い経験者」は、多岐のカテゴリーに渡って積極的に商品を購入

次に、「衝動ポチり買い経験者」は、スマホによるネットショッピングにより何を購入しているか調べてみた(グラフ3)。ご覧の通り、「衝動ポチり買い経験者」は、多岐のカテゴリーに渡って積極的に商品を購入しており、消費行動全般において能動的な意識が高いことが分かった。また、「衝動ポチり買い経験者」の中で最も購入率の高い商品は「書籍・コミック」48.4%、「衣類(アウターウェア)」47.6%であり、コンテンツやファッションに関心が高い。全体平均に比べて明らかに購入率の高い商品は「飲料・食料品」、やや購入率の高い商品は「生活日用品」「衣類(インナーウェア)」「衣類(アウターウェア)」「靴や鞄」「化粧品」であり、いわゆる贅沢品というよりも、衣食住に関連した生活必需品が多い。「衝動ポチり買い経験者」は、いかに日常的な購買行動においてスマホの利活用が定着しているかが分かる。

さらに、各商品の1回当たりの平均購入価格を見てみると、「衝動ポチり買い経験者」は「未経験者」よりも相対的に高い(グラフ4)。また、とりわけ「ジュエリーなどの高級アクセサリー」「高級ブランドの靴や鞄」に関しては、「衝動ポチり買い経験者」は「未経験者」に比べて明らかに価格が高く、一部贅沢品について購買欲求が高いことが分かる。「衝動ポチり買い経験者」は、生活必需品に関しては情報に敏感に反応し、興味関心の高い贅沢品については抵抗なく消費する傾向があるようだ。

グラフ3 「衝動買い経験者」の購入品
グラフ4 「衝動買い経験者」の商品カテゴリー別平均購入価格
(5)とりわけ「会話型・衝動ポチり買い経験者」は消費意欲がかなり旺盛

次に、今回注目した「衝動ポチり買い経験者」のうち、とりわけ特徴的な「友人や知人たちのSNSでの情報により衝動的に購入した」「友人や知人たちと実際に会って会話中に商品の話題が出て、盛り上がり衝動的に購入した」のいずれかを選択した、他者とのコミュニケーションの最中に「衝動ポチり買い」する経験者に注目してみた。仮にこうした属性を「会話型・衝動ポチり買い経験者」とすると、1年間の購入頻度を見ても、「6〜12回」「13〜24回」を選択した人の割合が全体平均に比べてやや高く、ヘビーユーザーの傾向が見られた(グラフ5)。また、スマホによるネットショッピングが増加傾向にあると回答した「会話型・衝動ポチり買い経験者」は63.0%に上り、全体平均に比べて明らかに高い。つまり、とりわけ「会話型・衝動ポチり買い経験者」は消費意欲が旺盛であり、今後、スマホを利用した消費行動を牽引する可能性があると言えよう。以後、「会話型・衝動ポチり買い経験者」の志向性を探っていく。

グラフ5 「会話型・衝動買い経験者」の1年間の購入頻度および増加傾向
(6)「会話型・衝動ポチり買い経験者」は、多様なシーンで積極的に消費する

続いて「会話型・衝動ポチり買い経験者」の購入シーンを見てみると、「友人や知人と一緒にいるとき」「外出の移動中」「実際の店舗にいるとき」を選んだ人の割合が全体平均に比べて明らかに高く、多様なシーンで積極的に消費していることが分かる(グラフ6)。また、「実際の店舗にいるとき」を選択した人の割合も16.0%であり、「ショールーミング」に通じる購買行動にも積極的であるようだ。「会話型・衝動ポチり買い経験者」は、仲間内での情報や評価を重視する傾向が強く、さらに、スマホの特性を生かした新たなショッピングスタイルを積極的に採用する人たちと言えよう。

「会話型・衝動ポチり買い経験者」のスマホによるネットショッピングの理由を調べてみると、「どこでも購入できる」「友人や知人などの意見を聞いて」「他の商品と比較しやすい」「価格が安い」「衝動買いしやすい」「情報を得やすい」といった項目が全体平均に比べて明らかに高く、コミュニケーション欲求と購買欲求が密接にかかわっており、加えて効率性を重視する志向性が読み取れる(グラフ7)。

今後、スマホを販売チャネルとする企業が、「衝動ポチり買い」を誘発するためには、顧客同士の「仲間内のコミュニティー」にどれだけコミット出来るかがポイントとなる。具体的には、顧客同士のリアルなコミュニティーやSNS上のネットコミュニティーにおいて、いかに自社の商品やサービスが「内輪ネタ」として取り上げられるかである。そのためには、企業は、高付加価値な情報を提供し続けるとともに、自社が提供するアプリや販売サイトのユーザビリティーを高め、検索しやすく、「ポチり」やすい環境作りも重要である。

グラフ6 「会話型・衝動買い経験者」の購入シーン
グラフ7 「会話型・衝動買い経験者」のネットショッピング理由

↑このページの先頭へ

[CASE STUDY]「友達のような関係づくり」で、ユーザーの買いたい気持ちを刺激し、適切に応える。ZOZO TOWN(株式会社スタートトゥデイ)

今回『先事新聞』では、とりわけスマホによる「衝動ポチり買い」という購買行動に注目してきた。サービス提供者側から見た場合、仲間内での会話やネットでのコミュニケーションの中で生まれる「買いたい気持ち」を上手にすくいあげ、購買に結びつけることが重要になってくる。ネットでのアパレル販売の先駆けであり、今や商品取扱高1,146億円(2014年3月期)まで成長を遂げた「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイに、スマホ・タブレット時代の顧客意識と、その意識に合わせた関係作りについて聞いた。

スタートトゥデイでは、「ZOZOTOWN」における顧客との関係性の作り方について、独自の考え方にもとづいて行っているという。「当社では、一般的な『収益性の高い顧客を中心に長期的な関係を築くCRM』ではなく、“全ての顧客と友達のような関係になる”『CFM(Customer Friendship Management)』を実践しています」(広報部)。顧客との関係づくりを担当するCFM部では、顧客の購買や行動にあわせて適切なタイミングでコミュニケーションする「One to Oneマーケティング」により、既存顧客とのより深い関係性を作り、また新規顧客の獲得を行っている。

「CFM部では、新規顧客とのベストタイミングでの出会いを創出し、既存のお客様には購買・行動の変化を見逃さず、適切なタイミングで、『迷惑がられず、親切と感じられる』アプローチをすることで、お客様が本当に欲しいと思える商品のご提案を可能にしています」(広報部)。例えば、顧客が購入した商品のお手入れ方法(スニーカーやTシャツの洗濯方法など)を記載したメールを送ったり、また住所変更した顧客には、インテリア紹介のメールを送るなど、顧客一人ひとりのステータスにあわせたメールマガジンを送ることで、押しつけがましくならずに、さりげなく商品を提案するコミュニケーションをとることができる、という。

サービス立ち上げ時には、PCからの利用が多かった「ZOZOTOWN」だが、近年ではスマホユーザーが過半数に達するまでになった。そこで「ZOZOTOWN」では2014年11月に、スマホでのユーザーインターフェース向上のため、サイトデザインを刷新した。テキストや画像を大きくする等、スマホユーザーが買いやすいサイト環境を整備している。また、以前はユーザーが気になった商品を登録しておく「お気に入り商品」の「在庫残り1点」「再入荷」「値下げ」などの情報はメールマガジンで通知していたが、「ZOZOTOWN」上(トップページ)でお知らせする「お知らせ機能」も追加し、ユーザーの「買いたい」気持ちをうまく刺激し、その気持ちに応えるような仕掛けを作っている。

スマホユーザーが増加していく中、上記のように顧客との関係性構築を行ってきた「ZOZOTOWN」が2013年10月に立ち上げたファッションコーディネートアプリが「WEAR」だ。「『WEAR』は、世界中のアパレルブランドやショップスタッフ、そしてお客様との間に多くのつながりが生まれることで、一人でも多くの方にファッションを楽しんでいただき、アパレル業界が更に活性化することを目指して立ち上げました」(広報部)。「WEAR」では、一般ユーザーはもちろん、ショップスタッフ、モデルやデザイナーなどの著名人から投稿されてくる100万件以上のコーディネートを参照することができる。毎日の着こなしの参考にできるのはもちろんのこと、気になるコーディネートから、商品情報など詳細が確認でき、さらには「ZOZOTOWN」や各ブランドオフィシャルのECサイトとも連携し、そのまま購入も可能だ。「WEARを通して、ファッションに興味を持つきっかけにして頂いたり、ファッション好きが増えることで、市場拡大にもつながるのではないかと期待しております」(広報部)。「WEAR」は、2014年9月末時点で、400万ダウンロードを突破。また、日本だけでなく、アメリカ、イギリス、台湾、韓国など25の国や地域で展開している。

↑このページの先頭へ

「先事新聞」コラム
第11回 売れるものには理由(ワケ)がある

2014年10月31日。週末の金曜日も重なり、渋谷のスクランブル交差点は、ハロウィンで仮装した多くの人々で賑わった。特殊メイクでゾンビになった者、アニメやゲームのキャラクターに扮した者、中には警備に当たる警察官の横にミニスカポリス姿の女性がいたりと、現場はかなりカオスな雰囲気だったという。
 この日、盛り上がりを見せたのは何も渋谷に限らない。六本木では多くの外国人の仮装姿も見られたし、毎年、国内最大級のハロウィンイベントが開催されるJR川崎駅の「ラ チッタデッラ」一帯では、クオリティの高い仮装人間たちが集結した。その他、全国各地の繁華街でも同様の光景が繰り広げられた。
 そうした盛り上がりの結果、2014年のハロウィンの経済効果はおよそ1,100億円に達し、バレンタイン商戦の1,080億円を上回ったそう。そう、気が付けばハロウィンはバレンタインより大きなイベントになっていたのだ。
―とはいえ、1つ疑問が残る。バレンタイン商戦の2月は消費増税前。駆け込み需要もあり、日本経済は比較的調子がよかったころだ。対してハロウィンが行われた10月は、増税後の落ち込みからなかなか景気が戻らず、喘いでいた時期。普通に考えれば、逆風に晒されたハロウィンの方が落ち込むと考えがちだ。

景気が全てにあらず

思えば、日本でハロウィンが盛り上がるようになったのは、せいぜい、ここ数年だ。以前は、インターナショナルスクールの子供たちが魔女やお化けの仮装をして、近所の家々を回ってキャンディーをもらう、純粋な外国の記念日という印象だった。それが、今のように日本の大人たちが仮装して、大挙して街へ繰り出すお祭りになったのは、やはり、あの影響と言われる。
―そう、東京ディズニーランドだ。かの地でハロウィンイベントが始まったのは、1997年。だが、最初の数年はそれほど盛り上がりを見せなかったという。転機となったのは、大人のゲストの仮装が認められた2002年からである。これ以降、年々、彼らの仮装のクオリティが上がり、 それと共にハロウィンの知名度も全国に波及。そして2000年代後半になり、渋谷や六本木をはじめ、全国各地の繁華街で大人たちが仮装して街へ繰り出す光景が見られるようになったのである。
近年、ある劇場支配人はこう嘆いているという。「最近は表現したい人がたくさんいて、それを見たい人が全然いない」―この言葉は、実に端的に“時代”を表している。今はSNSなどで誰もが表現者になれる時代。一度、その楽しみに目覚めた彼らは、もはや一観客でいることに満足しない。近年のハロウィンの盛り上がりが、SNSが普及し始めた時期と重なるのは、偶然ではないだろう。昨年、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」の曲に合わせて企業や自治体の人々が踊るタイアップ動画がYouTubeで盛り上がりを見せたのも、一億総“表現したい”時代を象徴する出来事だった。
 そう、ハロウィンが経済効果でバレンタインを上回ったのは、かような時代の流れなのだ。人々の“表現したい”欲求が、年々、盛り上がりを見せた結果である。
反対に、近年、バレンタインが以前ほど盛り上がらなくなったのも、職場の男性たちに渡す「義理チョコ」文化が廃れ、今や女性同士の仲間内でチョコを交換し合う、小規模な「友チョコ」文化に移行したからである。

時代は“本流”を求める

「うちはアベノミクスの恩恵がない」と、売れないことを政治のせいにするのは簡単だ。でも、100%、景気でモノが売れるとは限らない。前述のバレンタインのように、その業界や業種の構造的な衰退化のケースもある。大事なのは――“売れるモノには理由がある”。正しく時代の流れを読み取れているか。
 例えば、2014年2月に六本木にオープンして、12月には丸の内に2号店を出した、ニューヨーク生まれの人気レストラン「ウルフギャング・ステーキハウス」。同店の客単価は平均1万5000円と、決して安くはないが、連日大盛況である。それは、「赤身の熟成肉」という、食に“本流”を求める、今の時代にマッチしたからである。
 日本人の霜降り肉信仰は、今や昔。もはや僕らは、肉文化の本流であるアメリカ人たちが好む肉の旨味が、霜降りの脂ではなく、赤身のアミノ酸であると知っている。同店で提供される牛肉は、アメリカ農務省の格付けで最上級の「プライムグレード」。それを専用熟成庫で28日間ドライエイジングすることで、軟らかな肉質と、アミノ酸による旨味成分が豊富な赤身の熟成肉となるのだ。
ウイスキー市場にも同様の動きが見られる。このところ、「日本のウイスキーの父」竹鶴政孝と妻・リタをモデルにしたNHKの朝ドラ「マッサン」の影響もあり、ウイスキー市場が好調である。加えて、サントリーのシングルモルト・ウイスキー「山崎」が、かの有名な英国のガイド本「ウイスキー・バイブル2015」で世界最高のウイスキーに選ばれたタイミングも重なり、「山崎」や「竹鶴」などの伝統の銘柄が再び注目を集めている。
 ウイスキーのブームは数年前にもあったが、当時は「ハイボール」人気。今回がそれと異なるのは、飲み方が“本流”志向になっている点。ハイボールではなく、ウイスキー本来の味を楽しめるストレート派やロック派が増えているのだ。
 その流れは、焼酎業界で2012年、芋焼酎の「黒霧島」(通称クロキリ)を発売する霧島酒造が、遂に焼酎業界トップの麦焼酎「いいちこ」の三和酒類を売上高で抜いたこととも無縁じゃないだろう。時代は、癖がなく飲みやすい麦焼酎よりも、多少癖が強くとも、焼酎の“本流”である芋焼酎へ回帰しつつある。もちろん、クロキリが売れたのは、その開発に当たり、芋独特の強い匂いを抑えるなど、商品改良を重ねたことも背景にはあるが―。

広がる“キャリテ・エ・プリ”信仰

ミシュランガイド東京が、2014年版から「ビブグルマン」なる新たな評価(星は付かないが、5,000円以下で食べられるお薦めの店)を加えたのも、やはり時代の流れである。
 これ、フランス語でいう「キャリテ・エ・プリ」。単なるリーズナブルとは違い、消費者の賢い選択という意味合いである。昔のように、今は高級店が妄信的に流行る時代でもない。ミシュランの「ビブグルマン」は、2015年版から和食店も加わり、掲載店は325店。更に充実したラインナップになった。
 実際、その動きは世界的なもので、今やパリもニューヨークも、ミシュランで「ビブグルマン」に掲載されている店が人気を博している。ミシュランで最初に「ビブグルマン」が掲載されたのは1997年のパリ版から。要は少し遅れて、日本もその流れに追いついたのだ。 いや、この「キャリテ・エ・プリ」信仰は、何もレストランに限らない。様々な分野でも見られる時代のトレンドである。
 例えば、自動車業界。相変わらず国内市場は苦戦続きだが、こと軽自動車に限ってはずっと調子がいい。それは「軽」の性能が昔と比べて向上し、車格も大きくなり、普通乗用車の維持費と比較して考えると、キャリテ・エ・プリ的に「自動車はこれが賢い買い方」と消費者が学んだからではないだろうか。特に売れているのが、トールワゴンと呼ばれるタイプである点も注目したい。ホンダの「N-BOX」やダイハツの「タント」など、いわゆる車高が高く、後部ドアがスライド式で、使い勝手がいいタイプ。パッと見は、もはや軽自動車には見えない車格である。 コンビニの世界でも、セブンカフェをはじめとするコンビニコーヒーが相変わらず好調なのも、挽きたてのコーヒーが缶コーヒーより安い価格設定で飲める「キャリテ・エ・プリ」信仰が背景にある。消費者の求める「うまいコーヒーの賢い買い方はこれ」というニーズと合致したからである。
 2015年、セブンイレブンは専用ケースを用いてドーナツの店頭売りも始めるが、成功の鍵はやはり「キャリテ・エ・プリ」が握るだろう。ただ安いだけでは客はなびかない。彼らは品質も、専門店に劣らないクオリティを求める。その両方が満たされた時、初めて彼らは動く。
 モノを売るのに、景気がよくなり、その波に乗るのは理想的である。だが、それが全てじゃない。「売れるものには理由がある」―本当に大事なのは、時代の風を読むこと。
 波よりも、風なのだ。

草場 滋 くさば しげる 「指南役」代表

エンタテインメント系企画集団「指南役」代表。1995年「ソニー・アート・アーティスト・オーディション」入賞、98年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に『逃走中』(フジテレビ)の企画原案。著書に『11のスタンダード』(実務教育出版)など。

↑このページの先頭へ

編集後記

 今回、我々が注目したスマホによる「衝動ポチり買い経験者」の主な特徴は以下の通りである。
  • 「スマホ経験年数が5年以上の30代女性」が最も「衝動ポチり買い」をしている。
  • 「衝動ポチり買い経験者」は、多岐の商品カテゴリーに渡り購買欲求が高い。
  • 「衝動ポチり買い経験者」は、生活必需品の購入においては積極的にスマホを活用し、興味関心の高い贅沢品については抵抗なく消費する。
  • 1回当たりの平均購入価格は、「衝動ポチり買い経験者」の方が「未経験者」よりも相対的に高い。
  • 「衝動ポチり買い経験者」の中でも「会話型・衝動ポチり買い経験者」は、とりわけ消費意欲が旺盛である。
  • 「会話型・衝動ポチり買い経験者」は、仲間内での情報や評価を重視する傾向が強く、さらに、スマホの特性を生かしたショッピングスタイルを積極的に採用する。

スマホを販売チャネルとする企業が「衝動ポチり買い」を誘発するためには、顧客の「仲間内のコミュニティーへコミットすること」が重要となる。今回紹介した「ZOZOTOWN」による「CFM(Customer Friendship Management)」という発想はまさに好事例と言えよう。スマホの利用率が高い20代〜30代は、FacebookやLINEといったSNSを「オープンなコミュニティー」と「クローズドなコミュニティー」に使い分け、上手に商品やサービスに関する情報をシェアし合っている(詳しくは前号参照)。つまり、核心的な情報についてはあまり公にせず、「仲間内のコミュニティー」においてのみシェアしているのだ。今、スマホやSNSの普及により、「仲間内」の有り様はより細分化・多様化しており、同時に、そこでシェアされる情報、いわゆる「内輪ネタ」に対するロイヤリティーがますます高まっていると言ってよい。逆に言えば、「内輪ネタ」以外の情報に対するロイヤリティーは低下していると言えるのかもしれない。となると、今後、企業は顧客との良好な関係作りのみを目標とするのではなく、「仲間内と認められるほどの深い関係作り」を課題とすべきであろう。

NTTアド『先事新聞』編集長 小林勝司
※ 発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。
※ 掲載されている会社名、商品名、サービス名は各社の商標、または登録商標です。

↑このページの先頭へ