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先事新聞 vol.26 「つながり」が消費者のモチベーションを喚起する

今号のキーワード 「つながり」が消費者のモチベーションを喚起する
「つながり」が消費者のモチベーションを喚起する

ツイッターやフェイスブックなど、ソーシャルメディアの隆盛が、生活者の「日常的なアクティビティをオープンにしたい」という欲求や「他者と情報を共有したい」という欲求を高めたと言えよう。こうした1次情報を他者と共有したいという欲求を上手に活用し、商品やサービスの利用を喚起しているケースが増えているようだ。

例えば、多くのランナーたちに好評を博している「Nike+(ナイキプラス)」がある。センサーを通じて走行距離や速度を測定し、データとして蓄積するというサービスだが、フェイスブックと連携して「友達」と共有することも可能だ。つまり自らの「成長過程」を他者と共有することで、「励まし合ったり」「競い合ったり」と、一人では到底得ることのできない「心理的な情報」を獲得することが出来るわけだ。

実はこのサービス、本国アメリカでは更なる飛躍を遂げている。その名も「Nike+ FuelBand」。これまでの「Nike+」は、ジョギングやマラソン愛好者向けだが、「Nike+ FuelBand」は、その対象者を一気に生活者全般にまで拡大した。大きな特徴は、腕に巻くバンドを通じて、「酸素消費量」を「NikeFuel」という単位で表し、利用者の活動量を統一的に数値化していくというもの。いずれは、これらの情報をクラウドに集めて解析し、利用者に適切なサービスを提供していくらしい。

今号の『先事新聞』では、他者との「つながり」が消費者のモチベーション喚起に結びついているサービスに注目してみた。「食べログ」や「クックパッド」のように、情報を共有しあい、生活者の行動を喚起するサービスを「コミュニティサイト」とし、以下の定量調査を実施した。

まず、20代から60代男女に対し、「コミュニティサイト」の利用率と意向率をたずねた。最も利用率の高い世代は30代女性(76.0%)で、しかも唯一、利用率よりも意向率(68.0%)が下回っている。しかし、自由回答の中では、「同じ目標に向かっている同士でつながれば心強いし、楽しく目標達成が出来そう」といったポジティブな声が多く、「目標達成」が、日常的なアクティビティを構成する重要なキーワードとなっているようだ。と同時に、利用率が高い分「コミュニティサイト疲れ」を感じていることが意向率の低下につながっているのかもしれない。逆に利用率よりも意向率が高く、その差が20ポイント以上も開きのある世代は60代男女だ。未経験者が多い分、ある意味、情報欲求やつながり欲求があり、最もポテンシャルが高い世代とも言えよう。

利用したことのある「コミュニティサイト」をたずねると、総体的に「グルメ・レシピ」系を挙げる人が最も多く、とりわけ30代女性の利用率が7割以上と高いスコアを示している。具体的には、レシピ共有サイトでは「クックパッド」や「楽天レシピ」、グルメ口コミサイトでは「食べログ」や「ぐるなびみんなの口コミ」が上位を占めているようだ。続いて利用率の高い「コミュニティサイト」は「自己啓発」系で13.0%、具体的には、無料で編集に参加できる「Wikipedia」が高い比重を占めている。

利用した理由をたずねてみると、「知らない情報を知ることができる」56.1%、「知識が増える」42.0%、「新しい発見がある」31.3%と、情報欲求や知識欲求が刺激されることが動機となっていることが分かる。他方、「同じ価値観を持つ人とコミュニケーションできる」4.2%や「いろいろな人とコミュニケーションできる」4.2%と、他者とのコミュニケーションそのものを求める意向率は極めて低い。つまり「コミュニティサイト」を利用する動機とは、あくまでも情報や知識の収集がメインであり、利用者たちが求める「つながり」とは、「情緒的」な関係性ではなく、「機能的」かつ「割り切った」関係性であるようだ。また、「グルメ」や「自己研鑽」といった分野において生活者が、メディアに掲載された2次情報よりも、「つながり」によって得られる1次情報を重視する傾向が高いことがうかがえる。

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「モチベーションを喚起するソーシャルメディア」、3つの視点「努力」「行動」「知恵」
「努力」成果を共有することで励まし合える。
 スマートフォン・モバイル市場では、スポーツをテーマにしたサービスが数多く展開されており、人気を博している。特に最近流行のランニング関連を中心に、さまざまなアプリケーションが展開されている。またスポーツをテーマにしたSNSなどソーシャルメディアでは、それぞれユーザーが自分の成果や目標を書き込み、あるいは他のユーザーとコミュニケーションを楽しんでいる。自分の努力を可視化できるだけでなく、他者と共有することが、モチベーションの継続につながっている。
成果を共有することで励まし合える。

シューズを中心にスポーツ用品、アパレルを広く展開するナイキが行なっている「Nike+」は、シューズやウェアにつけた小さなセンサーでジョギングやウォーキングのペース・距離・消費カロリーを計測し、データとして蓄積できる。2006年のスタート以来、多くの人たちから支持を集めているこのサービス、今では全世界で300万人以上が参加する「世界最大のランニングコミュニティ」と呼ばれるまでになった。次第にコミュニケーション、ソーシャル機能を強化していることが特色で、今ではツイッターやフェイスブックとも連動している。走り終えた後に走行距離や時間を投稿するだけでなく、ランニング中にも友達とつながり、励ましあいながら走ったりすることもできる。ツイッターでハッシュタグ「#nikeplus」を見てみると、走り終わったたくさんのランナーが、距離や時間をつぶやいていることがわかる。

また、エコドライブの継続をテーマにしたサイト「ReCoo(レクー)」では、給油量と走行距離を入力することで毎月の燃費を簡単に算出できるが、登録ユーザーのデータを集積して車種別の平均燃費を表示することで、ユーザー間における自分の位置を確認することで、モチベーションアップにつなげている。

このように、商品やサービスを通じてユーザーに継続のモチベーションを提供する場合、毎日の取り組みの成果を自分が見て確認できる、という機能をベースに、その成果を他者と励ましあうことのできる「つながり」の機能を継続のスパイスとしているようだ。

【努力を可視化・共有するサービス】

■Nike+(ナイキプラス)

http://nikerunning.nike.com/

■燃費計算エコドライブツール「ReCoo(レクー)」

http://www.recoo.jp/

「行動」の可視化・共有で、日常を異化する。
 GPSを活用した「行動の可視化・共有」に、「ゲーム」の要素を取り入れることで、日常の行動自体を楽しみ、活性化させる。世界的には「foursquare」が有名であり、また日本ではいわゆる「位置ゲー」と呼ばれる数々のサービスが知られているが、移動先に「チェックイン」することでその場所をバーチャルに自分のものにできる、というのがこれらのサービスの基本的なアイデアだ。行動を活性化させるこれらのサービスに企業が注目し、コラボレーションが盛んに行われている。
「行動」の可視化・共有で、日常を異化する。

「MyTown」はアメリカで400万人のユーザーを持つ位置情報連動型のソーシャルアプリ。2011年11月から日本でも展開を開始した。このゲームの基本的なアイデアは、先行する「foursquare」や「ケータイ国盗り合戦」といった「位置ゲー」と同様、GPSを利用し、自分の今いる場所を送信(チェックイン)することで、その場所をゲームの中でバーチャルに「手に入れる」というもの。「手に入れた」場所はコレクションでき、自分オリジナルの街としてアプリの中に表示される。

スマートフォンに当たり前に付いているGPS機能があればこれらの「位置ゲー」には簡単に参加できる。ユーザーが仕事や日常生活を送ることが、同時にこのゲームに参加することにつながる。わざわざゲームをする、というよりも、ちょっとした時間やついでの時間でどこかに行き、チェックインすることを楽しむ。つまり「ゲーム」という要素を付加することで毎日の行動を「活性化」できる。

「ゲームによる行動の活性化」に企業も注目している。先述の「MyTown」日本版では、コンビニや飲食店、あるいは不動産など企業十数社の参画が展開当初から決まっていた。店舗にチェックインすることでレアアイテムがもらえる、などのキャンペーン連動型の活用を狙っての参画だ。

【行動を可視化・共有するサービス】

■MyTown日本版

http://yumemi.co.jp/mytown_info/

■foursquare

https://foursquare.com/

「知恵」の集積が、新しい行動につながる。
 「クックパッド」などレシピサイトの普及で、家庭における日々の料理のスタイルは確実に変わった。レシピサイトで調理法がわかると知っていれば、馴染みのない食材をスーパーで見かけた時、あるいは手の込んだ料理を作りたいと思った時、臆せずチャレンジする意欲が生まれるようになった。ソーシャルなつながりを使った「知恵」の共有は、人々にチャレンジの意欲をもたらし、新しい行動への扉を開く役割を持つ。
知恵の集積が、新しい行動につながる。

2011年9月にオープンした、ファッションQ&Aサイト「COODE(コーデ)」。「ユーザーからのファッションやコーディネートに関する質問に、他のユーザーから、あるいはスタイリストなど「プロ」からの回答が得られるサービスだ。ファッションアイテムをコラージュしたイメージ画像を作成して回答に使うことができることも大きな特色の一つだ。コラージュイメージに使用したアイテムにはショッピングサイトへのリンクが張られ、質問者が気に入ればそのまま購入することもできる。「身長149cmと小柄ですが、春先に似合うコーディネートを教えて」という具体的で切実な質問から「恐山に行くのにテンションのあがるコーディネート、お願いします」といったジョークめいたものまで様々な質問が寄せられ、ユーザーはコミュニケーションを楽しみながらファッション情報を交換している 。

「COODE」を運営するプレイマインド株式会社では「実店舗での接客提案をウェブ上でバーチャルに実現することでファッション通販事業を拡大させることが可能」としてビジネス展開の可能性を語る。ウェブ上にユーザーからの「知恵」を集積するだけでなく「行動」へのリンク、つまり実際の購買に結びつくチャンネルを設け、ユーザーの新しいファッションへの挑戦を支援し、それをビジネスにつなげようとしている。

【知恵を可視化・共有するサービス】

■COODE(コーデ)

http://e-coode.com/

■クックパッド

http://cookpad.com/

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[先事新聞]コラム
第4回 脱マス・メディア――リアル体験が人心を掴む。

ある雨のウィークデーの午後だった。所用で渋谷の公園通りを歩いていると、渋谷公会堂の辺りがすごい人だかりである。近づいて見ると、若い人が多い。10代後半から20代前半くらいだろうか。それにしても、平日午後、学校や仕事のある時間から並んでまで見るイベントとは、よほどのビッグネームに違いない。 「誰の催しなんです?」僕は近くにいた2人組の女の子に聞いてみた。しかし――彼女たちが口にした、その“声優さん”の名前を僕は知らなかった。これでもエンターテインメント業界の流行りものには敏感な方である。僕は思った。 ――世の中には、まだまだ知らないことがたくさんある。

メディアの上で起きていることは一部

「リアル脱出ゲーム」というイベントをご存知だろうか。参加者たちが、ある空間に閉じ込められた状態でゲームがスタート。制限時間内に会場内に隠された暗号を見つけ、仲間と協力しながら謎を解いて脱出するというもの。これが今、大変な人気なのだ。昨年、東京ドームで行われた際には3日間で1万2000人を動員。チケットは3000円弱と決して安くないが、それでも発売と同時に完売したらしい。
 このイベントを手掛けるのは、京都にあるフリーペーパーの編集などを手掛けるSCRAPなる会社である。リアル脱出ゲームは4年前から全国各地のホテルや遊園地などで開催し、20代や30代の若者たちから熱狂的な支持を得ているという。グループで参加できる楽しさと、正解率5%と難解なことからリピーターも多いと聞く。

しかし、それほどの人気を誇るのに、“謎解き”という性質上、ネタバレを警戒してテレビなどで紹介される機会は少ない。参加者たちの多くは、口コミで評判を知った人たちである。
 そう、今や本当に面白いことは、意外にマス・メディアの外にある。かつてのようにテレビや情報誌に触れていれば、なんとなく世の中の流行りについていけるという時代ではない。人々は口コミやソーシャル・メディアを介して仲間たちと情報を交換し合う。そして――そのベースとなるのが、“リアル体験”である。

AKB48とソーシャル・メディア

今や国民的アイドルのAKB48。昨年発売されたシングル5枚は全てミリオンヒット。日本の音楽史上、空前絶後の人気である。だが、そんな彼女たちでも、出演するテレビ番組の視聴率はそれほど振るわないことが多い。なぜか。

彼女たちのコンセプトは「会いにいけるアイドル」である。プロデューサーの秋元康さんは、結成当初から常設劇場を設け、公演や握手会などでファンを増やしてきた。その戦略は一貫しており、選抜総選挙やジャンケン大会などのビッグイベントも、絶対にテレビ中継を入れない。あくまで会場に来てくれるファンが優先である。つまり、ファンのリアル体験がAKB48の人気の源泉。テレビの視聴率が振るわないのも、そもそも人気の成り立ちが違うからである。

AKB48がブレイクしたのは、2009年と言われる。選抜総選挙が話題になり、「RIVER」で初のオリコン1位を獲得。そこからの活躍はご承知の通り。面白いのは、その軌跡はソーシャル・メディアが日本で普及していった時期と重なること。まずツイッターが盛り上がり、フェイスブックが続いた。そしてソーシャル・メディアの特徴も、個人のリアル体験と共感――つまり、AKB48と構造が同じなのである。

消費者が、マス・メディアで上から情報が降りてくるのを待っていたのは過去の話。今やソーシャル・メディアを介して、横のつながりで互いのリアル体験に共感し合う。そして、ここが大事なことだが、マスで得られる情報よりも、横のつながりで得られる情報のほうを信用している。 そう、消費者の心を掴むには、いかにリアルな体験を積ませるかにかかる。そして、“自ら”の言葉で仲間たちに発信してもらうことである。

草場 滋 くさば しげる 「指南役」代表

エンタテインメント系企画集団「指南役」代表。1995年「ソニー・アート・アーティスト・オーディション」入賞、98年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に『逃走中』(フジテレビ)の企画原案。著書に『11のスタンダード』(実務教育出版)など。

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オピニオン
株式会社NTTアド
コミュニケーションプランニング局
コミュニケーションライフ推進担当部長
島田 実木雄

今回は、ソーシャルメディアが持つ生活者の行動喚起機能に着目する企業の動きを「サキゴト」としてご紹介した。今号からは「ソーシャルメディア」や「スマホ」等と対象領域を絞った上で、これら「今」のテーマの中に見える「一歩先事」をご紹介していきたい。

一年前の3月11日に未曾有の災害が我が国を襲った。今後長らく、日本は一丸となって復興に取り組まなければならない。その復興の向かう先を考えることもまた復興活動に含まれる。そして、それを考える際に最も参考になる国がオランダではないか、というのが筆者のオピニオンだ。最近ずっとオランダのことばかり考えている。「オランダが使えそうな感じがしている」といったらいいか。ここから何号かに渡って、限られた紙幅の中ではあるが「知的道具としてのオランダ」「私的蘭学のススメ」のような短文を展開させてもらいたい。

まず初回の今号はこの国のアウトルックを。1/4の干拓地を含む国土は九州とほぼ同等の面積で、そこには約1,600万人の人々が暮らす。江戸時代に我が国が有した唯一の西洋社会への窓口であった。当時の我が国は西洋諸国の文化や技術をこのオランダ一国を通じて学んだのであり、そのためそれらは「蘭学」と総称された。歴史的に我々はこの国に多くを負っているのである。・・・などとついつい書いてしまうように、どうしてもこの国のことを思うときに時間感覚が後ろを向きがちである。ゴッホを筆頭として、フェルメール、レンブラント、エッシャーといった昔日のオランダ美術は今でも日本人ファンが多い。その他、思いつくままにあげてみると、アンネ・フランク、ホイジンガ、スピノザ、エラスムスなどなど、オランダのイメージはどうしてもこの国が過去の歴史上生み出した数々の偉人達と分かち難く結びついている。

しかし、我々が共有する強力な潜在的イメージに反して、我々の現代生活と現代オランダの距離は思ったよりずっと近い。「フィリップス」「ユニリーバ」「ロイヤル・ダッチ・シェル」「ハイネケン」等のブランドは広く我が国で知られるところだが、これらは皆オランダで生まれたグローバルなメガ・カンパニーである。グローバルな事業活動があまりに成功しているのでオランダという単独の国のイメージと結びつかないのだ。また、最近日本で趣味の自転車人気が高まっているが、「子どもは自転車に乗って生まれてくる」といわれるくらいオランダ人は自転車が好きらしい(自転車保有率世界第一位)。事の発端は1973年のオイルショック。水害との絶えざる戦いを生き抜いてきたこの国の人々は、環境問題への対応も早かった。

多くの日本人の第一想起がチューリップと風車に収束するであろうオランダだが、これにしても角度を少し変えて見てみると、世界ではじめてバブル経済の崩壊(1637年チューリップ・バブル事件=チューリップの球根への投資がバブルを生み、そしてはじけた)を経験した国であり、クリーンエネルギーの先進国(風車保有台数約1,000基、最多時は10,000基)でもある。昔から極めて「今日的な国」だった。オランダ語という固有の国語を有するにもかかわらず、英語・仏語・独語等の近隣諸国の言語を操る人が多い。地図を見ると瞭然だが、その地政学的メリットを最大限に活用し、昔日からヨーロッパ交通・交易の要路として商人的繁栄を謳歌した。それもあってか「Dutch account(割り勘)」などと英国人に嘲笑されたように、「倹約」を美徳とする国民気質を有する。また、人でも物でも古いほど価値があると考えるようで、年長者に優しいとのこと。まるで、往事の我が国の話のようだ。これから数号にわたって「ポルダーモデル」「ジニ係数」「インクルーシブな社会」「子どもの幸福度」などといったキーワードを手がかりに、現代の蘭学を読者にススメたい。

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