調査・研究/発行物

先事新聞 vol.20

今月のkey word 「ガマン系スポーツ」
「ガマン系スポーツ」 今月のキーワード

「健康ブーム」などといわれて久しい。その実態として、「健康食」のジャンルと双璧をなすのが健康維持のための「運動」であろう。我が国では戦前、肉体の鍛錬を通じた精神修養が運動の主要目的として前景化されていた。しかし戦後はその反動もあり、「ガマンするより楽しもう」といった享楽的風潮がドミナントになる。そしてその表れのひとつとして、1960年代初頭のテニス、70年代のボウリングといった「レジャー型スポーツ」のブームが次々と起こる。これらのスポーツは、原則的には、「団体で・適度な負荷で・楽しくやる」スポーツである。また、英語であてる動詞が「play~」であることからもわかるように、極めて「遊戯性」の高いスポーツであり、アマチュアにとっては「体を使った遊び」である。

ところがここへきて、マラソン、自転車の長距離ロードレース、水泳、そしてそれらを組み合わせたトライアスロン、バイアスロン等とストイックに持久力を強いられる「ガマン系スポーツ」がサキゴトのようだ。

これらのスポーツは、「エンデュランス・スポーツ」などと名付けられ、原則的には、「一人で・同じ動作を長時間行う・キツイ」スポーツだ。先のプレイ系スポーツと対極の関係にある。

グラフ:参加者拡大が期待されるスポーツ

当社オリジナル調査でも、今後、参加者拡大が見込まれるスポーツには、「水泳」「ハイキング、登山」「ジョギング、ランニング、マラソン」「筋トレ」など、エンデュランス系といっていい種目があがっている(右グラフ参照)。

また、スポーツをする理由を見ると、1位「気分転換、ストレス解消になる(62.6%)」、2位「健康維持・増進になる(60.0%)」、3位「ダイエット、肥満防止(46.9%)」あたりは想像どおりだが、その他、「精神面で鍛えられる」と回答する男性20代(20.3%)や男性30代(22.7%)の存在が目を引いた。周りから「草食男子」などと揶揄され、本人もその自覚があるような若い男性層が、自らの精神修養のためにエンデュランス系スポーツを始め、はまっていった、というような物語が浮かぶ。

他の理由としては、「手軽にできる(全体25.5%)」「お金があまりかからない(全体16.5%)」あたりも多く、スポーツを選ぶ条件として、ウェアや用具類等の初期投資が低廉である点が重視されているところも、時代を感じさせる。

ともあれ、今回の先事新聞も、日頃マーケットを考察する読者の皆さんのビジネス面での健康維持に貢献できたとしたら、スタッフ一同幸甚の至りである。

*NTTアド自主調査(インターネット調査、首都圏在住20~69歳男女1,000名、2010年4月26日~29日実施)

※「普段よくやるスポーツ(複数回答)」と「今後やりたいスポーツ(複数回答)」とのポイント差を算出し、 28項目中上位15項目をピックアップした。

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ヘルシー&エコノミーなガマン系スポーツ事情
■人気が高まる「ガマン系スポーツ」

まずは「ガマン系スポーツ」(=エンデュランス・スポーツ)の代表格である「ランニング」を例に見てみよう。ここ数年、皇居周辺はスポーツウェアに身を包んだ20代~50代のランナーたちで賑わっており、曜日や時間帯によって違いはあるが、その数は1日およそ5,000人といわれている。これは2007年に始まった3万人規模の『東京マラソン』の影響も大きく、年々その熱は高まっているようだ。さらに、皇居に限らず、都内のランニングスポットがさまざまなメディアで紹介されたり、各種イベントの開催やランニングステーションのような新たなサービスが誕生するなど、ブームにますます拍車がかかっている。

■キーワードは「不景気」と「健康ブーム」

もちろん「ランニング」も「サイクリング」も「トレッキング」も目新しいスポーツではない。平成18年社会生活基本調査(総務省)によれば、「ジョギング」「サイクリング」「登山・ハイキング」の人口はそれぞれ1,000万人前後、合わせると約3,000万人にのぼる。単純に計算すると実に日本人の4人に1人はこれらのスポーツの経験者といえるが、今までは比較的地味(?)なスポーツとして認識されてきた。しかし、このところの人気はこれまで関心のなかった女性や若者まで巻き込んでいる。その人気の秘密は、「不景気」と「健康ブーム」にあるらしい。そもそも走ったり泳いだりすることは、本人のやる気さえあれば、決してお金のかかるものではない。また、最近のスポーツウェアは、華やかでリーズナブルなものも数多くラインナップされている。さらに健康ブームから、身体を動かすことには多くの人が肯定的である。人々はここに新たな目標を見出し、人生を楽しんでいる。比較的低予算で楽しめるエンデュランス・スポーツは、意味なくムダな消費をしない「不景気」で「エコ」な時代にぴったりの「価値ある消費」なのかもしれない。と同時に、次々と新たなビジネスモデルが誕生しているようだ。

コミュニティ 場の提供
カフェやイベントで、人とつながり楽しさが広がる

イベント、コミュニティ、大会など、さまざまなメーカーやメディアなどが情報を発信して気軽に参加できる場の提供をしているのが最近の特長である。ひと昔前ならば、一人で黙々と「するスポーツ」だったランニングやウォーキングだが、今どきは多くの人とのつながりも楽しめるようなスポーツに成長している。

雑誌『FRaU』〈ランニングウエア・イベント〉
普段も着られるようなおしゃれで女性らしいデザインのランニングウエアを提案。伊勢丹やカフェでイベントも開催。
http://watashi-frau.com/o_event/
ナイキ〈Nike+『47都道府県“最強"決定戦』など〉
47のチームに分かれて全国No.1の座を目指す都道府県対抗のランバトルなど、さまざまなイベントを開催。
http://inside.nike.com/blogs/nikerunning_events-ja_JP/2010/02/23/nike-vol4-47-
千代田区観光協会〈ランホテ〉
ランナー向けのプランを提供する皇居周辺のホテルを紹介し、検索できる千代田区観光協会のポータルサイト。
http://www.kanko-chiyoda.jp/tabid/1644/Default.aspx
低コスト モノの提供
低予算で、機能性やファッション性も満足できる

比較的、低予算で道具を買い揃えて始められるのもこのエンデュランス・スポーツの特長だ。ウェアやシューズなど(中には高価な自転車などもあるが)を準備すれば、ランニングコストはほとんどかからない。また、ファッション性の高いウェアや機能的なツールなど目新しいモノが続々登場し、モノを揃える楽しみを付加している。

マルイ Field〈山スカ〉
アウトドアビギナー女子向けに「山スカ」のコーディネイトなども専用サイトを設けて伝授している。
http://www.01field.jp/outdoor/yamasuka/
ヘルシア〈「歩く」を応援!〉……脂肪を上手に燃焼する
「ウォーキングをもっとよく知るサイエンス」「ツイッター連動企画」など楽しく歩くキャンペーン実施中。
http://www.kao.co.jp/healthya/water/index.html
セイコー〈LUKIA Running Style〉……ランニングウォッチ
日々のランニングに役立つ機能を備えた腕時計が新登場。ランニングイベントなども開催している。
http://www.seiko-watch.co.jp/lukia/lukia/runningstyle/
向上心 ノウハウの提供
手軽に本格的、やるからにはきちんと知りたい、学びたい

エンデュランス・スポーツは自分自身を鍛えるというスポーツだ。自己流もいいけれど、どうせやるならしっかり身につけたいというニーズも高い。そこを満足させてくれるのが、ノウハウ提供のサービスである。自分の客観的なデータの把握からコーチングまで、向上心を満たしてくれるサービスが始まっている。

アシックス〈ランニングラボ〉
ランニング能力を「体格」「筋力」「動作」「持久」の4つの側面から見つめ、ランナーの特徴を客観的に捉えようとするもの。
http://www.asics.co.jp/running/lab/
CYCLE SPORTS.jp〈自転車情報サイト〉
初心者から楽しめるレンタルバイク込みのお手軽ツアーから本格的な山道を走るものまで、ガイドと一緒に楽しく安全に走る。
http://www.cyclesports.jp/
PUMP〈フリークライミング〉
ロッククライミングが都会でもできるインドアのジム。初心者でもトライすることができ、スクールもあり、仲間づくりも可。
http://www.pump-climbing.com/first/index.html?pScgym

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エンデュランス・スポーツの市場調査

今や皇居は全国のランナーたちにとって聖地といっても過言ではない。そこで今回は、その実態を探るべく、皇居に一番近いランニングステーションとして人気の高い「JOGLIS(ジョグリス)」のプロデューサー宮井氏にお話を伺った。

宮井 瑞樹(みやい・みづき)氏

宮井 瑞樹(みやい・みづき)氏
株式会社メディアコミュニケーションズ
半蔵門ランナーズサテライト
JOGLIS(ジョグリス)プロデューサー

JOGLISのオープン時から店長として携わり、現在はプロデューサーとして、イベント、広報、営業などの渉外担当も担っている。

街づくりにも貢献するランニングステーション
男女合わせて400超のロッカールームを完備

目の前が皇居という立地を活かし、「音楽とランナーの街」をキャッチフレーズにTOKYO FMとアシックスのコラボで2009年11月にオープン。ロッカーやシャワー、カフェ、ランナーのアシスト、ウェアのレンタルなど会社帰りでも気軽に利用できるサービスを提供している。千代田区をランナーの街にすべく、周辺ホテルや同業者にも働きかけ、気持ちよく走るためのルールやマップづくりなど地域ぐるみの活動も展開している。

楽しくおしゃれに走るファッションランナーの増加
イベントスペースも兼ねたカフェ

利用者は男性30~50代、女性30~40代が中心で、ビジターを含めると20代も多い。毎月複数回(個人差はあるが)利用する会員の他に、不定期に利用するビジターも多いそうだ。「最近は大会経験者も2~3割と増えていますが、利用者の大半を占めるのは気軽に楽しく仲間で楽しむようなファッションランナーですね。そんなニーズに応えて、毎週木曜の夜に、アシックスコーチから走り方のサポートを受けながら仲間と楽しく走る『フレンズラン』というイベント(参加費無料)なども開催しています。」(宮井氏)。

JOGLIS(ジョグリス)
メンバー2,000円~/月、ビジター700円/回
http://www.joglis.jp
※このコンテンツはNTTアドの情報紙『先事新聞』第20号(2010年6月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。
※掲載されている会社名、商品名、サービス名は各社の商標、または登録商標です。

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