調査・研究/発行物

目黒発 vol.24

SPECIAL REPORT
「熱心なファン」に向けた広報の現在
[ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社・株式会社デノンコンシューマー マーケティングのケース]
COLUMN
映画で学ぶ広報・コミュニケーション力 第3回
現場からの発信にこだわれ
OPINION
キミが北なら、ボクらは南へ。
草場 滋「指南役」代表
AD LETTER
当社のリスク・マネジメント活動
SPECIAL REPORT
「熱心なファン」に向けた広報の現在
「ハーレーは、人生だ。」
趣味を超える価値を共有する戦略
-ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社のケース-

熱心なファンは、企業にとって有り難い存在だ。ブログやSNSなどのCGM(消費者発信の情報メディア)の存在感が増す中、商品や企業の良き理解者である熱いファンが再びクローズアップされている。一方で、高度な理解力を有する彼らは、企業への批判者にもなり得る。これまた、企業にとって欠かせない大切な顧客からの有益な情報なのだ。熱心なファンの心をつかむ広報アプローチとは何なのか、再考すべき時がやってきた。製品や技術特性などを喧伝するだけでは、ファンは納得してくれない。彼らの要求を満たし、更には心の琴線をくすぐるような仕掛けが求められる。今号では、ファンとの良好なコミュニケーションで成功し、更には新しいファンをも獲得している企業を取材した。その考え方や取り組みから、熱心なファンとのコミュニケーションのポイントを浮き彫りにする。

■人生を楽しむツールであることがハーレーの真価
写真:ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社

独特のサウンドと振動を奏でる心臓部(エンジン)、そして大陸をクルージングするかのような車体構成。アメリカンバイクの最高峰として、ハーレーダビッドソンは100年以上にわたって世界中のファンを魅了している。日本の二輪車市場は、ピークだった1982年の国内出荷台数328万台からほぼ右肩下がりで、2008年には約52万台まで減少。市場が6分の1まで縮小した。しかし、こうした状況下にありながら、ハーレーダビッドソンは、’85年から24年間継続して対前年を上回る出荷台数を記録している(’08年の新車登録台数は15,698台)。

ハーレーダビッドソンのバイクの価格を平均すると、国産車の倍相当の200万円余である。しかも「世界に1台しかない自分好みのハーレーをつくりたい」という欲求が強く、ほぼすべてのバイクオーナーが新車購入時に平均で28万円分のカスタムパーツを購入するという。更には、一人で4~5台、家族合計で10台ちかくを所有するファンも中にはいるという。「ハーレーオーナーは、バイクを移動手段ではなく、人生を楽しむためのツールと捉えています。その楽しさを伝えることをコミュニケーションの中心に据えています」とセールスプロモーション・広報部長の増田勝也氏は語る。

特に新規のファン向けには、ハーレーの所有によって「人生に10の楽しみが生まれる」と訴求している。ハーレーに「乗る」こと、そしてカスタム車を「創る」楽しみに加え、「出会う」「愛でる」「競う」「海外交流」などの幅広い楽しみ方を提案している。所有の喜びだけに留まらない付加価値を伝えているのだ。ハーレーを初めて買う人のほぼ全員が「友人・知人、家族など周囲の影響」を購入理由に挙げるという。既存のハーレーオーナーに勧めてもらうためには、性能などのスペックやハード面ではなく、バイクがもたらす付加価値や情緒的価値を広めていくことが重要というわけである。

■ハーレーがユーザーを育て、ユーザーがハーレーを育てる場づくり
写真:増田 勝也氏
(左)ハーレーダビッドソン ジャパン セールスプロモーション・広報部長 増田勝也氏。
(右)全国各地で頻繁に行われるイベントでは、地元ディーラーと本社との密接な連携がとられている。
写真:全国各地で頻繁に行われるイベント

楽しさを伝えるために重視しているコミュニケーション手段がイベントである。メーカーとして安全・安心な内容を心掛け、オーナーだけではなく家族全員が楽しめる企画が用意される。バイクは個人の趣味だが、家族の理解が重要であり、家族の心情にも配慮するというわけである。また、イベントに参加する社員全員が名札を付けて、所属と顔を明かして顧客の生の声を聞くよう心掛けているそうだ。「ハーレー・オーナーズ・グループ」という会員組織も重要な接点。会報誌を通じて、イベントや会員同士のツーリング会をリポートしたり、10万マイルを走行した会員を「走りの殿堂」として表彰したりするなど、ハーレーライフを満喫する情報をメーカーと会員が互いに発信する仕掛けになっている。

イベントも含め、いわゆる「企業側の顔が見える」コミュニケーションを行っているわけだが、これは全国134社200拠点(2009年 9月7日時点)のディーラー(正規販売代理店)でも徹底されている。購入者に配布される「ディーラーガイドブック」には、各店のスタッフの顔写真まで掲載されており、「戸籍簿」という別名で呼ばれているそうだ。「フェイスツーフェイスのコミュニケーションだからこそ、メーカーの思い、ディーラーの思い、オーナーさんの思いがそれぞれ理解し合えるのです。ツーリング途中で立ち寄った店であっても、接客態度の良し悪しといった情報まですぐに我々に伝わります」(増田氏)。

互いの思いを通じさせることがコミュニケーション上の特徴といえるが、「これだけファンの皆様に理解され、同時に怒られたりもするブランドは珍しい」と増田氏が言うように、決して楽ではない。例えば、’02年に新シリーズとして発売されたV-RODは、従来の空冷エンジンではなくハーレー初の水冷式が搭載され、発表時から批判が噴出した。「すべてのハーレーが水冷に替わってしまうのではないかという危惧が批判につながったのです。メーカーの思いをきちんと伝えず、ファンの皆様を不安にさせてしまったのが原因」(増田氏)。

一般的に企業とユーザーの思いが合致しない場合、理解者は批判者になりかねない。ファンがアンチになる可能性すらあるのだ。それを防ぐためにも、お互いに顔を見せて理解し合うコミュニケーションの場を数多く設けたいところだ。この点、ハーレーダビッドソン ジャパンの施策は危機管理広報にもつながっていると言える。「結果的にはファンの皆さんからご理解を頂き、ハーレーを更にご愛顧いただくきっかけになりました」(増田氏)。幅広い接点がファンとの強固な絆を育む場になっているのである。

ブランドを残し続ける姿勢を伝えて信頼につなげる
-株式会社デノンコンシューマー マーケティングのケース-
■ユーザーといっしょに、聴空間を追い求める姿勢
写真:米山 良介氏
デノンコンシューマーマーケティング 営業本部マーケティング営業部主幹 米山良介氏。

オーディオは、ケーブル一本にこだわって音質を究めるディープな趣味の世界。日本電気音響の名からブランドを得たデノンは、前身が1910年創業の伝統ある企業だ。初期のSPレコードや蓄音器、放送用機材で培った技術力で、70年代から総合オーディオブランドとなった。現在はエントリーからハイエンドの入口までをカバーするポジションを確立している。

デノンのファン層は、圧倒的に男性が多いが、世代は20代から60代までと幅広い。「新入学や新社会人のお祝いにオーディオ機器を贈る習慣がなくなり、オーディオファンは世代や職種で括れなくなっています」と、営業本部マーケティング営業部主幹の米山良介氏は説明する。旧来からあるオーディオ機器の市場は確かに縮小傾向にあるが、携帯音楽プレイヤーの普及により、「音に触れている人の数は、ウォークマン時代よりもはるかに多く、ビジ ネスチャンスもある」と米山氏は見ている。そのため、インドアで音楽を聴く文化的価値を伝えることが、情報発信のテーマになっている。

情報発信の手段としては、電子メールやDMによる配信、専門誌への広告などを行っているが、音を文字で伝えるのは極めて困難だ。そのため、顧客との接点として重視しているのが、体験イベントスペースの提供である。家電量販店やオーディオ専門店で行うショップイベント、業界展示会への出展などがあり、特に注力しているのは、2006年から月1回ペースで開催する「DENON 銀座音楽倶楽部」。20席程度の会場をショールームにして音楽を聴いてもらうという無料体験会だ。開催時間は、午後3時から8時までの5時間。毎回60名ほどの参加があるという。こうしたファンとの接点で伝えるべきことは、デノン製品の特性や音質ではないと米山氏は強調する。「数字で表せるスペックには、メーカーや機種ごとに性能差はありますが、『全く違う音がする』というほどの明確な違いは当然ながらありません。視覚の具体性と異なり、聴覚は非常に抽象的で評価や好みも様々です。また、店頭での試聴は何かとストレスが多いものです。私たちが伝えたいのは、ストレスなく音楽を聴ける空間の価値であり、そのための製品を出し続けるという企業姿勢なのです」

写真:DENON 銀座音楽倶楽部
「DENON 銀座音楽倶楽部」の様子。
人気高も高く、席が埋まる時も少なくないそうだ。

競合他社が、売れなくなったカテゴリーを縮小や生産中止にする中、デノンは、役割を終えて時代にそぐわなくなった商品分野以外、ほとんどのオーディオジャンルの製品を生産し続けている。例えば、カセットテープ式カラオケは今も現行製品だ。米山氏は、「残存者利益を得ているだけ」と謙遜するが、こうした逸話がユーザーに安心感を与え、結果的にブランドを更に高めている。デノンの場合、商品が絶えず、体験もできるという安心感がファンの心を捉え、固い絆の形成に貢献していると言えるだろう。企業姿勢に加え、真摯に向き合う直球勝負のコミュニケーション姿勢に注目したい。ファンから厚い信頼を得ることは企業にとって最も難しいことの1つなのだ。

■情緒的コミュニケーションこそ、広報アプローチの鍵

バイク、オーディオ機器という縮小傾向にある業界で、両企業とも確実にファンの心をつかんでいるのは、コミュニケーションにも大きな理由があるからではないだろうか。スペック至上主義ではなく情緒的価値からバイクの魅力を訴求する、音質の一点張りではなく快適な音楽環境という基準でオーディオ製品を訴求する…。製品の質や性能ではなく付加価値を主体にファンに伝えている。ファンはその企業、その製品の何に対して熱心になっているのだろうか。ハーレーであればハーレーがある生活、デノン製品であれば心地良い聴空間を充実させることに熱心なのであって、製品そのものだけに執心なわけではない。「熱心なファン」は商品の周辺価値にまで情熱を傾けているのである。

彼らに歩み寄るコミュニケーションこそ、熱心なファンに響くアプローチだ。両社は、顧客視点、顧客本位のコミュニケーションが徹底されている。そこに商品スペックではない情緒的価値や付加価値を補ったことで奏功したのである。商品の持つ付加価値を押し付けず、消費者が自由に選べるようにする。実際に体験できる場、楽しめる機会が強力な接点となる。ファンの喜びを支えるという視点が何より大切である。

「熱心なファン」に向けたコミュニケーション4つのポイント
1 ファンは、製品だけでなく、付加価値の充実にも熱心であることを理解する
2 ファンの立場に歩み寄り、どのような価値を求めているか把握する
3 付加価値を押し付けるのではなく、選択をファンに委ねるアプローチをする
4 企業とファンが対等かつフェアな関係で、顔が見えるように対話をする

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COLUMN
映画で学ぶ広報・コミュニケーション力 第3回
現場からの発信にこだわれ
『クライマーズ・ハイ』
2008年 日本 堤 真一、堺 雅人、尾野 真千子、髙嶋 政宏、山崎 努

広報担当者の重要な仕事の1つに、社内の情報を集めて外部に向けて発信するという役割があります。その意味では、新聞記者と同じような目線が必要になります。今回は、日航機の御巣鷹山墜落事故を映画化した作品から、記者目線を学びましょう。

石川慶子氏

石川 慶子(いしかわ けいこ)
広報コンサルタント。有限会社シン代表。映画製作会社、PR会社を経て独立。 企業広報支援の他、自治体や学校にもメディアトレーニングなどのサービスを提供。

■記者は「ナマの声」を欲しがるもの

—1985年8月12日、524名を乗せた日航ジャンボ機が消えた—

群馬県の北関東新聞は、共同通信社からの 配信を受け、緊急取材体制を取る。登山する予定だった遊軍記者悠木は、急遽日航機事故全権デスクに命じられ、次々と判断を迫られる。

「新聞記者は広報部に来ないで、なぜ現場担当者のところに直接行ってしまうのか」という質問をよく受けます。理由は、明快です。現場の声を取りたいからです。広報部からのワンクッション置いたコメントよりも現場担当者のコメントの方が取材価値、報道価値があるからなのです。

この映画の中でも、そんな山奥まで苦労して 行く必要はない、共同通信社からの配信を紙面にすればいいじゃないか、いや地元なんだから自分達が現場に行って雑感を取るべきだ、と意見が対立します。結局、必死の思いで墜落現場に行ったにもかかわらず、締め切りには間に合わなかったのですが、県警キャップ佐山が書いた雑感には、魂を揺さぶられるような迫力がありました。まさに現場を見た者にしか書けない生きた言葉がそこにあったのです。

私たちも、上がってきた情報をただメディアに流すのではなく、必ず現場担当者や当事者を取材して気持ちを聞きだし、その熱い思い、生きた言葉を発信できれば、読む人を感動させることができるのではないでしょうか。

■何を伝えるのか。信念が問われる
信念を持った取捨選択がメッセージを力強くする。

悠木デスクは、地域報道班玉置記者の事故調査委員会に関するスクープネタの裏取りをキャップに指示しますが結局、確信を持てず見送りにしてしまいます。デスクは、通常記者が取ってきた情報を別ルートからチェックします。当事者や周辺関係者に質問にして相手の反応が沈黙やノーコメントであれば「肯定」と受け取ります。〈明確な否定がない限りは肯定〉というのが暗黙のルールなのです。

このように、一般的に記者はスクープを取ることに必死になりますが、スクープ合戦になると本質から離れていくこともあります。 どんな切り口で何を伝えるのか、といった信念の方がむしろ差別化につながります。事故から数日経ち、他社が日航機事故をトップニュースから降ろす中、北関東新聞はどうするべきなのか、意見が割れます。日本人の横並び意識は報道でも同じなのでしょう。他社の動きを見ながら報道内容を決めるので、皆同じような報道になってしまいます。

佐山キャップは現場に残された遺書を掲載するよう悠木デスクに交渉します。読み上げられる遺書の言葉が悠木デスクの心を打ちました。残された言葉は、墜落の恐怖、 これまでの人生への思い、周囲の人達への感謝、どうしても助かりたいというさまざまな思いで満ち溢れていました。佐山キャップの中には現場主義が染み付いているのでしょう。現場で見たものを伝え、現場に残されたものを伝える、ここに伝える記者としての信念を感じずにはいられません。その一貫した思いが周りの人を突き動かす力となるのではないでしょうか。

私たち広報担当者も、信念を持って伝えるべき内容を取捨選択してメッセージの発信をするよう心がけたいものです。

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OPINION
キミが北なら、ボクらは南へ。
草場 滋 「指南役」代表

数々のテレビ番組の企画、マンガ原作、最近では『キミがこの本を買ったワケ』といったマーケティング本から、映画『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』まで、さまざまなジャンル・テーマで活躍を続ける「指南役」。代表・草場滋さんのお話からは、どのメディア・テーマであっても変わらない、一貫した「視点」の存在を、強く感じることができる。

写真:草場 滋氏

草場 滋 (くさば しげる)
「指南役」代表。指南役は、1983年に発足したエンタテインメント系企画集団。メンバーは草場滋(代表)、津田真一、小田朋隆の3人。89年「日本DIYコンテスト」最優秀賞、95年「ソニー・アート・アーティスト・オーディション」入賞、98年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。 著書に『「サービス」をサービス!』、『「考え方」の考え方』(以上大和書房)、『キミがこの本を買ったワケ』(扶桑社)、『タイムウォーカー-時間旅行代理店』(ダイヤモンド社)ほかがある。

■高校時代の“イタズラ”から生まれた「指南役」

「指南役」とは、私(草場滋)と津田真一、小田朋隆の3人のメンバーで構成される企画集団です。テレビ番組の企画、構成やマンガ、雑誌、書籍等の原案、執筆など、エンタテインメント系を中心に幅広いジャンルで活動してきました。

もともと僕たち3人は福岡県にある高校の同級生なんです。みんな水泳部に所属していたんですけれど、これが弱小チームで県大会でまともに戦っても勝てない。それなら発想を転換して、誰も泳いだことのない「第5の泳法」を開発して、オリジナリティで勝負しよう!と考 えたのがはじまりです。

高校を卒業してからも、みんなで集まってはくだらないこと、変なことをいろいろ考えていました。そのころホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫さんが、雑誌の誌面でネタを募集していたんです。そこに毎週のように投稿していたことが縁で、ホイチョイ・プロダクションズとかかわるようになり、やがて今の仕事へと繋がっていきました。

僕たち「指南役」はそんな“イタズラ”の延長線上から生まれた集団といえます。「指南役」の名は、昔、中国で使われていた方位磁石にその由来があるのですが、普通の磁石とは逆の「南」を指すのが特徴なんです。人と反対の行動を取りたがるアマノジャクな僕らにそっくりだなと思って、それでこの名前にしました。

■みんなが思っているよりも「みんな」は賢い
写真:草場 滋氏

これまで何冊か本を出しましたが、世の中で“当たり前”と思われていることをうたがってみる、みんなとは真逆の発想をしてみるという点はすべてに共通しているかもしれません。

『キミがこの本を買ったワケ』(指南役著、扶桑社)は、誰もが知っている商品や広告を例に、人間がモノを買うことの不可思議なメカニズムを解き明かした本です。たとえば、「用もないのにコンビニに寄ってしまう理由」 とか、「CMは好きなのに商品を買ったことがない理由」などなど……、消費者心理とか、行動経済学とか、そういう難しいことでなく、読みながら「こういうことあるある!」と楽しんでもらえるようなエンタテインメントとして書きました。

企業はモノを売るとき、マーケティングから、広告、商品パッケージ、陳列方法に至るまで、あらゆることを吟味して、細かい戦略を立てていきます。でもそれが消費者の心をつかめるとは限らない。

じゃあどうすればいいのか? 本を書いて分かったのは、消費者あるいは視聴者は企業が思うよりもずっとあいまいな存在であり、賢い存在だということでした。それが分からないと“上から目線”でモノを売ってしまうことになるんです。

インターネットの普及などで、消費者はこれまでに考えられないほど多くの情報を手に入れました。“上から目線”で広告されなくても、欲しい商品を手に入れることができる。

だからこそ、企業は一つの商品や考え方を押しつけるのではなく、判断するための“選択肢”を提供するくらいに考えたほうがいいと思うんです。今の消費者は一つの考えを押しつけられるとかえって引いてしまい ます。この本は、そんなマーケティングに対するアンチテーゼでもあったんです。

一つの考え方を押しつけるという傾向は、最近のマス・メディアにも多く見受けられます。ニュース番組などでも、一方向に偏った報道や考えを主張する傾向にあると感じますが、ニュースは、適切な情報を視聴者に与える ことが本来の役割で、その後の判断は視聴者にゆだねられるべきです。視聴者や消費者をコントロールしようと企業やマスコミは 頑張るけれど、かえって逆効果になってしまうことのほうが多いのではないでしょうか?

もう一つ大切だと思ったことは、徹底的に消費者目線になるということです。これは簡単なようでいて、なかなか難しい。

ウォルト・ディズニーは、ディズニーランドをつくるとき、子どもはどのように見えるのか、何度もかがみ込んで園内を歩き、子ども目線をとことん確認したという有名な話があります。机上で考えているだけではなく、実際に現場に行って汗をかかないと見えてこないことっていっぱいあるんですよね。

マーケティングに頼り切るのではなく、自分自身が一消費者となってみること―行列のできる店に並んでみるとか、自分の会社の商品を実際にスーパーで買ってみるとか……。そうやって足で稼いだ情報と感覚が消費者マインドに近づくために必要だと思うんですよ。

■現在は過去の繰り返し。歴史を「リスペクト」する

僕たちの作品の中には、“もし太平洋戦争が回避されたなら、1940年代の東京はどうなっていたのか?”について考えて書いた『幻の1940年計画-太平洋戦争の前夜、“奇跡の都市”が誕生した』(アスペクト)や“バブル経済が崩壊しなければ、日本はどうなっていたのか?”を想像して考えたホイチョイ映画『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』などがあります。

『幻の1940年計画』を書いたきっかけは、当時の写真の中に、とてもオシャレな服を着て外出する女性の姿を見つけたことです。現代の若い女性が着ていてもまったく違和感がないようなセンスの服を着こなしていることに驚きました。1940年代というと暗い戦争の時代というイメージが強いけれど、すべてがそうだったとは言い切れない。

バブル経済にしても同じことが言えるのではないでしょうか? バブルはその後の経済不況を導いた悪という見方をされがちですが、文化・芸術に時間とお金をかけるゆとりがありましたし、今ほど自殺者が多くはあり ませんでした。

もちろん、歴史に“if(もしも)”がないのは当然のことですが、物事を一面的に見てしまうともう一方が見えなくなってしまう。そんなメッセージを込めたかったんです。

ファッションもそうですが、私たちは先人のアイデアや知恵をなぞっているに過ぎないことも少なくない。世の中に“オリジナル”はそう多くありません。そんな先人へのリスペクト、過去に対する尊敬を忘れたくないと思っています。

いろいろ偉そうなことを言ってきましたが、僕らも読者目線、視聴者目線ではどうなんだろうといつも試行錯誤を続けている一人です。僕らの書いた本を読んだり、テレビ番組をみてくれる人がいるなら、少しでも分かりやすく、面白く、ためになるものを提供したい……。その究極の形が僕らにとっては、エンタテインメントであり、僕らがエンタテインメントにこだわり続ける理由はそこにあるのです。

これからも世の中を真逆からみるアマノジャク的発想とイタズラ心を持ちながら、楽し くて、役に立つ企画を送り出していきたいと思っています。(談)

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当社のリスク・マネジメント活動

株式会社エヌ・ティ・ティ・アド コミュニケーションプランニング局
PR担当部長 島田実木雄

企業の広報活動において、クライシス・コミュニケーションの重要性が増してきていることは、万人の認めるところでしょう。殊に数年前は、大きな企業不祥事事件が相次いで発生し、広く社会の注目を 集めたところでした。

こういった事態は、近年の消費者意識の急激で 大きな変化に対して、企業サイドが経営の方法論を対応させるのが遅れたがために、両者のギャップが引き起こした面も少なくないと考えられます。具体的には、様々な商品・サービスの安全に対する意識や、環境問題に代表されるような企業の社会的責任に関する消費者意識が変化してきています。

企業サイドから見れば、このような消費者意識の変化のスピードの速さや大きさが、企業リスクの多様化と重篤化につながっていると見ることができます。

リスクの顕在化(事件化)を、病気の発症に喩えるなら、企業の健康状態を「未病」的アプローチで統制しようというのが、いわゆるリスク・マネジメントの活動です。これは、風邪を引いてしまった後に最適な薬を服用することを考えることではなく、そもそも風邪を引かないように体質改善しようという考え方です。

当社は去る2004年度、企業としての全社ビジョンを社員の全員参加で構築しました。具体的には「私たちNTTアドは、コミュニケーション領域におけるプロフェッショナル・パートナーとして、時代に響くコミュニケーションを創造することで、お客様の企業価値とブランド価値の最大化に貢献し ます」としました。そして企業スローガンとして「Communication Wings 社会と企業と人を未来へ飛翔させるコミュニケーションの翼へ。」と謳っております。ビジュアル表現としては、公式HPなどでもご覧いただけますように、様々な色鉛筆によって形づくられた翼のフォルムとなっています。

しかし、その翼も当社が「健康」であってはじめて、大きく広げられるものです。

そのために当社では、リスク・マネジメント活動を常態的に運用しています。具体的には、ビジネスリスクマネジメント委員会という運用母体の統制下で、情報セキュリティ、環境、コンプライアンス、制作物の品質、労働、災害・事故と、当社の企業経営に 関わるリスク領域を6つに区分し、各々の責任組織がマネジメント活動に従事しています。

特に、情報セキュリティ・マネジメントシステム(ISMS)と環境マネジメントシステム(EMS)については、国際的な外部認証プログラムが存在します。当社でもISO27001(2005年)とISO14001(2004年)を全社サイトで取得し、 毎年更新を続けています。

そこで、紙幅の許す範囲で、当社のISMSとEMSについて簡単にご紹介させていただきます。

当社のISMSの特徴は、取り扱う重要情報の大部分がクライアント企業各社様からお預かりしたものだという点にあります。もちろん当社社員の個人情報等も保有・管理していますが、取り扱う数の上では、大量なキャンペーン応募者リストやDM配布先リスト等の個人情報、公表前の新サービス情報等、社外からの秘密情報が圧倒的に優位です。またその情報を、業務に必要な範囲でパートナー企業様にもお渡ししなければなりませんので、総体として、「ストック型」のみならず「フロー型」オペレーションも重要である、ということもできます。そのために我々は、他社のケースを学びながらも当社固有のマネジメントシステムを構築し、日々、是正・改善に努めているところです。

EMS活動では、システム構築のスタートとして環境方針をたてるとともに「(環境活動上の)目的・目標」を設定します。「紙・ゴミ・電気」等の「負の環境要因の最小化」が掲げられことが多いでしょう。 しかし活動が進むにつれ、これらの指標は必ず「限界値」が見えてきますので、ここから「事業に即した」EMSに軸足をシフトしていくことになります。当社は、広告を中心としたコミュニケーション活動がその事業領域ですので、やはりクライアント各社様の広告コミュニケーション活動に関して、地球環境にポジティブなご提案を行うことにこそ、その本分があるのではないだろうか、と考えました。そこで「環境配慮型企画」をできるだけ多くご提案することを、目的・目標の一つにあげ、紙・ゴミ・電気に終わらないEMS活動を展開しています。その一端として、昨年よりオールNTTグループの環境スロー ガンになっている「つなぐ。それは、ECO」の広告 プロジェクトについても、微力ながらご支援させていただきましたし、ドコモ・システムズ様のCSR広告(2007年ニューヨークフェスティバル金賞受賞)の制作にご協力させていただきました。

当社は今後とも、クライアント各社様に対して、より充実したコミュニケーション提案を実現するため、 またなにより企業市民としての務めを十全に果たすため、企業活動の土台としてのリスク管理活動に取り組んでまいります。

このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第24号(2009年9月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

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