調査・研究/発行物

目黒発 vol.19

SPECIAL REPORT
失敗を語り合う風土づくり
失敗を認め合う雰囲気と厳格なルールから、社員の創造力を養う企業風土が生まれた
-キヤノン電子株式会社のケース-

COLUMN
「かたちのないもの」を広報する 第1回
社会的視点を盛り込んだプレスリリース文を作成する

OPINION
“手触り感”を大切に、人々の心を伝えたい
大村正樹 リポーター

AD LETTER
次世代マーケティング研究レポート3
クリスマスには愛を…四季に合わせて五感を刺激するコミュニケーションを考える

OUR FINDER
広報が失敗を生かす

SPECIAL REPORT

失敗を語り合う風土づくり

失敗を認め合う雰囲気と厳格なルールから、社員の創造力を養う企業風土が生まれた
-キヤノン電子株式会社のケース-

上司からの叱責を恐れるあまり、社員が小さな失敗をも隠ぺいする…。気付かぬうちに問題が肥大化し、致命的な危機を招きかねない。ひいては企業の存亡にかかわるのだ。こうした事態を防ぐためには、社員が自らの失敗情報を自発的に公開できる風土作りが不可欠だ。今号では、企業が情報を共有し活用するためのインナーコミュニケーションについて考察する。

■どんな失敗も、報告さえすればマイナス評価にはつなげない

酒巻氏
酒巻氏の自室にある椅子やデスクの上には、書籍や資料が山積されている。「立ち会議」は、社長室の中から、もう始まっている。

キヤノングループで精密機械器具やソフトウェアの開発・生産などを担うキヤノン電子は、独自の施策を導入して業績を伸ばしている。1999年に同社代表取締役に就任した酒巻久氏は、自ら旗ふり役となり、斬新な業務改善策を数多く打ち出してきた。たとえば、イスに座らない「立ち会議」や近くの席の社員同士によるメールのやりとりを禁止するなど、何れもユニークだ。中でも不良率の低減と生産性の向上において大きな効果を発揮した施策が「失敗・成功事例集」の作成だという。失敗事例、成功事例をひとつひとつシートに記入させて情報を蓄積・共有、さらに週1回程度のペースで各部門で事例集をもとに勉強会を行うという試みである。2001年から行われていたシートへの記入を発展させ、05年からは冊子にまとめる形で本格的に開始。08年10月時点では20号までを作成し、計約3600件の事例が記載されている。

社員にとっては、失敗事例は簡単に公言できるものでない。そのため、どんな失敗も記入さえしてくれればマイナス評価はしないというルールを徹底した。失敗を公表する風土を作るために、記入件数が多い社員を“教育的事例を積極的に提供した”という名目で表彰する制度も設けた。失敗事例を冷静に分析し、書き記すことのできる社員ほど、優秀な人材であるとの考え方に基づいている。

■失敗を疑似体験することで、情報が「ノウハウ」に変わる

失敗といっても、チャレンジした上でのミス、単純な間違いなどいろいろなケースがあるが、キヤノン電子では、「役に立つ失敗」と「役に立たない失敗」に大別されている。前者は、ある課題やテーマを掲げて取り組んだ結果、失敗したもの。後者は、ルーティンワークにおいて本人の自覚がないままに起こしてしまう失敗である。「前者を繰り返すことは情報や知識の蓄積になり、マイナス評価はしません。一方、役に立たない失敗はルール違反と言い換えてもいい。これを繰り返す場合は厳罰を与えるべき」と酒巻氏は定義づける。失敗の質を見極める眼を養うためのツールとして「失敗・成功事例集」が機能しているのだ。

キヤノン電子秩父工場
埼玉県秩父市にあるキヤノン電子秩父工場には、一年を通じて数多くの見学者が訪れるという。

「失敗・成功事例集」では、結果の報告よりも、当該社員に対しては「なぜそうしたのか」、その上司には「なぜ止められなかったのか」という原因究明が重視されている。すべての報告書を社長がチェックする体制になっており、特に上司の原因追究が甘い時には差し戻されることもある。「事前にチェックできなかったこと」を反省するのではなく、なぜチェックできなかったのか、コミュニケーション不足や体制の不備などその原因を追究する。上司と部下が失敗の原因について話し合い、報告書を通じてトップとやりとりを繰り返す。「これを続けていると、問題がありそうな場合には事前に相談・報告する意識が生まれてくる」(酒巻氏)。コミュニケーションによって失敗情報が自分のノウハウとして身に付く。

これを他部署に広げたのが、事例集に基づく勉強会である。あえて自部門ではなく、他部門の事例を取り上げ、批判するのではなく自分たちの問題に置き換えてシミュレーションさせている。それは、「第三者的な視点から自分たちを捉えて、会話を活性化させる必要がある」(酒巻氏)との考えから実施されている。勉強会は就業時間外に開催(残業手当有り)、恒例の立ち会議ではなく、お菓子やお茶を持参しながらリラックスして議論させるといった工夫がある。他部門の事例を長時間かけて“疑似体験”することに意義を見出しているのだ。

酒巻氏によると、経験として蓄積される可能性のある「よい失敗」は、一人の社員が年に一回体験できるかどうかだという。他人の失敗を全員で共有することで、「よい失敗」に触れることのできる機会を増やしている。また議事録は、最終的に当該部署へも報告される。「事例をどれだけ蓄積しても“知識”にしかなりません。大切なのは“知識”を“知恵”として身に付けること。他人の経験を徹底的に学んで活用することなのです」(酒巻氏)。


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■失敗からスタートするコミュニケーションで、失敗を生かす組織が生まれる

こうした事例集は、失敗・成功という尺度がある以上、とかく競争意識や対抗意識が芽生えがちだ。しかし、同社の考え方は、事例集を通じてコミュニケーションを図ることで、協力意識を強化することにあるといえるだろう。

事例集が3号目に達し、失敗への意識が浸透しはじめた頃には、同社の不良率は前年の3割に激減するという成果が出た。また、組立部門の失敗事例から設計部門が学ぶことで、業務の改善につながるといったように、他部門の失敗事例を学ぶことによって横方向への連携意識も高まった。業務プロセス全般を見通せる想像力を身に付けることで、失敗が未然に防げることに気付いたのである。


失敗・成功事例集
すでに20号を数える「失敗・成功事例集」。ちなみに酒巻氏が一番印象に残っている失敗は、1号目に掲載されているものだそう。

■失敗を集めることが目的ではない。活用につなげる風土を作る

勉強会
勉強会
勉強会の模様。部門毎に集まり、リラックスした雰囲気の中、失敗事例の分析や意見交換が行われる。

失敗事例そのものにも変化があった。導入直後は、ルール違反などいわゆる役に立たない失敗も多く含まれ、“事例集の中から教訓を導き出すこと”が施策の主題として第1号冊子に明記されている。それが第8号では“大失敗を未然に防ぎ、企業競争力となる品質を向上させること”と改訂されている。レベルの高い失敗を各社員が理解できるようになったのである。今年編集された19号では、“失敗を隠すことが成功の芽を摘む”と原点回帰している。「現在は、失敗が深堀りされている状況。原点に戻り、新たな知恵を考える施策だと改めて気付いてほしいと思っています」(酒巻氏)

失敗の事例集作成を試みる企業は珍しくないが、データの蓄積自体が目的になってしまっている企業も多いかもしれない。本来の目的は、データベースの構築ではなく、会社に利益をもたらすための業務改善にある。収集されたデータを活用し、社内コミュニケーションにつなげることで、本来の目的が達成できる。コミュニケーションにおいては、失敗の質をしっかりと見極める眼を持ち、許容し、共有・共用する意識を根付かせることが肝要である。社員が自発的に発言・発想できる雰囲気を作らなければ、失敗は失敗のまま蓄積されてしまうのである。

■失敗を活かすインナーコミュニケーション 4つのポイント

1 失敗事例を明確に書き記すことのできる社員こそ、優秀な人材であると捉えるべき
2 “役に立つ失敗”と“役に立たない失敗”、失敗の質をしっかりと見極める
3 勉強会は、責任追及の場ではなく、原因追究の場と捉え、リラックスした雰囲気で行なう
4 他部署の失敗を当事者の立場で考えることで、想像力が養われ、横のミスを減らす
太陽パーツ株式会社 「大失敗賞」
■失敗をほめたたえる企業文化を醸成する
表彰式
「大失敗賞」授与式の模様。年2回行われる表彰では、社長自ら社員に表彰状を授与する。

自社の成功事例を取り上げ、社長賞として表彰する企業は多い。逆に、失敗をほめたたえ合う文化を持つ企業は数少ない。

大阪府堺市にある太陽パーツ株式会社は、金型を使ったダイカスト鋳造による金属加工品をはじめ、プラスチックやゴムなど多彩な素材・製法による部品製造を主な事業とする企業だ。同社には「大失敗賞」という名のユニークな表彰制度がある。仕事で大失敗をした社員を年2回表彰し、受賞者には金一封と賞状が贈られる。

受賞対象になった「大失敗」は、社員や会社のノウハウとして残り、後の事業に貢献することが期待できる「前向き」なものとして蓄積されていく。ある社員は、部品を新しい素材を使って作ることができないかと試作を繰り返し、結果的に数百万円の損失を出した。しかしそのチャレンジ精神と努力が認められ、「大失敗賞」を受賞した。社長である城岡陽志氏も「ムダな設備投資」でこの「大失敗賞」を受賞したことがあるというから驚く。

「挑戦したから、失敗する。挑戦のない会社には、失敗もない」。城岡社長の信念に基づいて作られた「大失敗賞」は、失敗を恐れたり隠ぺいするのではなく、健闘をたたえ合う精神を社員一人ひとりに浸透させていった。結果として、社内には何事にも前向きに取り組んでいく空気が生まれていったようだ。


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COLUMN
「かたちのないもの」を広報する 第1回
社会的視点を盛り込んだプレスリリース文を作成する

サービスや金融・保険商品など「無形商品」の広報は難しい。「かたちのないもの」に対するイメージを 持ってもらい、興味を持ってもらう。さらに報道する意味を感じてもらうために、広報担当者はなにをするべきか。 3回シリーズで考えます。

石川慶子氏

石川 慶子(いしかわ けいこ)
広報コンサルタント。有限会社シン代表。映画製作会社、PR会社を経て独立。企業広報支援の他、自治体や学校にも メディアトレーニングなどのサービスを提供。

■サービスの背景にある社会的課題を説明する

企業広報には、「企業広報」「商品広報」、大きくふたつの領域があります。今回は商品広報の中でもネット上のサービスやシステムなど目に見えないものに焦点を当てます。私もこれまでにさまざまな商品広報を手がけてきましたが、かたちのない商品の広報には苦労が多かったように思います。理由はきわめて簡単。見て直感的にわかるものではないため、素材発掘に時間がかかるからです。

素材発掘や開発にあたって必要な視点は、「新規性」「希少性」「影響性」「著名性」「人間性」「普遍性」「社会性」「記録性」「国際性」「地域性」などがあるといわれています。私が長年の経験から一番パブリシティとしての波及効果が高いと捉えているのが「社会性」です。

特にIT産業では、先進的なサービスが多いため、いきなりサービス内容の説明をしても誰もついてこないのです。数年前手がけたメンタルヘルスを維持するネットサービスの場合には、厚生労働省のストレスに関する資料や専門家のコメントを用意しました。今でこそ「メンタルヘルス」は時代のキーワードになっていますが、当時は「何それ?」といった反応だったからです。
 社会的背景や課題を切り口にすると記者は報道する意義を感じます。こちらの狙いとしては、社会的視点から新サービスの必然性、有益性、先進性を強調できます。社会性にこだわれば、企業としての姿勢やメッセージを伝えることにもなり、企業理念を伝える「企業広報」としての役割も果たすことができるというメリットもあります。

■記者の取材意欲だけでなく社員のモチベーションもアップ

イラスト

「社会性」を意識しているとプレスリリースの内容もクオリティの高いものにすることができます。昨年、パワハラについてのセミナー開催のプレスリリースを作成しましたが、ハラスメントの意味と最近の社会問題化の流れに加え、「本年10月15日に、東京地裁でパワー・ハラスメントによる自殺が労災に初めて認定される判決が出たことから、今後、企業は確実にハラスメント対策を求められることになります」という具体的な客観事実の一文を加えました。

「パワハラ」という言葉自体は昔からありますからそれほど珍しいセミナーではないのですが、「労災に初めて認定された」という情報が加わることで「このセミナーを告知すべきだな」、あるいは「今改めて書けるタイミングだな、セミナーを取材してみようか」と記者に思わせることができるのです。

このように無形商品のサービスであっても社会的課題を盛り込んで情報発信していくことで、見えにくいサービスを印象づけることができます。また、社員にとっても自社提供のサービスが社会の中で必要とされるものであることを意識させることになり、モチベーションアップの効果も期待できるのではないでしょうか。


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OPINION
“手触り感”を大切に、人々の心を伝えたい
大村正樹 リポーター

「情報プレゼンター とくダネ!」(フジテレビ系列)は、「ワイドショー」を変えたとされる。 それまでの朝のワイドショーとは一線を画し、「生活者視点」からのニュースや情報を提供した。 「とくダネ!」のリポーターとして活躍する大村正樹さんに、独自の視点についてうかがった。

大村正樹リポーター
大村 正樹(おおむら まさき)
リポーター。1967年4月26日、富山県富山市生まれ。 法政大学社会学部社会学科卒業後、鹿児島放送入社。退社後、フリーのリポーターとして活動をはじめる。主な出演番組に『とくダネ!』『おはようナイスデイ』『20世紀探検隊スペシャル』(フジテレビ)、『大村正樹EXCITINGリサーチ』(NACK5)などがある。近年は現場リポートだけでなく、子ども向け科学番組の司会などもつとめ、活動の領域を広げている。

■“自分の言葉”で伝えたい

地方局のアナウンサーを辞め、フリーのリポーターになったのは、今から16年前のことです。大学時代からマスコミ志望だった私にとって、アナウンサーは苦労して手に入れた憧れの仕事でした。しかし入社してしばらくすると、記者が書いた原稿を正確に読むことが求められるアナウンサーの仕事に違和感を感じていきました。今考えると生意気な話ですが、僕には僕の言葉があって、そのニュースに相応しい表現があると思っていたんですね。それで記者が書いた原稿をその場で自分なりの話し言葉に替えて読んでみたら、“記者への冒涜”だって大目玉を食らいました(笑)。

そんなアナウンサーの仕事に限界を感じはじめていた時、フジテレビ「おはようナイスデイ」がリポーターを公募していることを知りました。“これこそ神様がくれたチャンス”とひらめいた私は会社に辞表を書き、即応募。辞表を書く必要はなかったんですが、あえて退路を断つことで自分の情熱を表したかったんです。その想いが通じたのか、200人近い応募者の中から運良くリポーターの仕事を手にすることができました。

とは言え、「おはようナイスデイ」には大勢のベテランリポーターがいて、新人の私にそう簡単にチャンスが巡ってくるわけではありませんでした。そこで自分の強みは何か考えた末、たどり着いたのが、リポーターという仕事に対する“情熱”でした。他人が足を伸ばさない場所に労を惜しまず行ってみる、真実を求め、一人でも多くの人に話を聞いてみる―そうした努力を続けていった結果、リポーターとしての評価も上がっていきました。

この仕事は一人ではできません。ディレクター、カメラマン、音声、ドライバーと多くの人の情熱が映像リポートとなって集約されています。スタッフとの信頼関係が築かれ、皆が同じベクトルに向けて一つになった時、初めていい仕事が出来上がると思うのです。

■スマトラ島沖地震で受けた衝撃

大村正樹リポーター

これまで阪神・淡路大震災、オウム真理教事件など、未曾有の災害現場や事件現場に足を運んできました。北朝鮮やイラクなど、危険な場所へも出向きました。どの場所も衝撃的でしたが、人生観が変わってしまうほどの衝撃を受けたのは、2004年12月に起きたスマトラ島沖地震の取材でした。

津波に襲われたリゾート地に足を踏み入れた私たち取材班は、ビーチに打ち上げられたいくつもの遺体を目の当たりにしたんです。中には自分の子供くらいの幼さで亡くなったお子さんもいましたし、自分くらいの年齢の方もいました。さらに取材をしていくと、僕と同じ年齢の家族構成でお子さんたちを失ってしまった日本人のご夫婦にも出会いました。あまりにも切なくなり、取材を抜きにして何か力になりたいという思いがこみ上げ、怪我をしたご夫婦に代わって被災地に行って遺品を回収し届けました。これは放送には直結しませんでしたが、人としては当然のことです。とにかく小さな遺品の数々を回収しながら涙が止まりませんでした。

それ以降、取材に対するスタンスが少し変わりました。放送に直接結びつかなくても、人間としてできることはする。災害の取材に行く途中、脱輪した車があったら助けるとか……とてもささいなことですが、出来る限りやるようにしています。たとえ映像にならなくても、そうした場面をリポーターとして身をもって体験することで、伝えられるものがあると信じているからです。

リポーターになって間もないころ、大先輩の東海林のり子さんに“自分の印”を付けられるリポーターになりなさいとアドバイスされたことがあります。それから十数年、ようやく“大村印”と言えるものをリポートに付けられるようになったと感じています。

僕にとっての“大村印”とは、一言でいうなら“手触り感”です。たとえば、地震の被災地でリポートをする時、僕はできるだけ多くの人の声を聴くようにしています。不安で眠れぬ夜を過ごす人の声、家を失い途方に暮れる人の声、故郷の惨事を嘆き悲しむ人の声……その声すべてを放送することはできませんが、そうした極限に達したリアルな声を僕自身の中で昇華させ、リポートにつなげていくようにしています。

被災地にはメディアが大挙してやって来て、煌々とライトが焚かれ、取材合戦が繰り広げられます。そんな中、いきなりマイクを向けられても、本当の気持ちなど語れようはずもありません。マイクは暴力になりうるのだということを肝に銘じつつ、どうしたら本当の心境を語ってもらえるのか考えた結果が“手触り感”を大切にした取材方法でした。

倒壊した家、破断した道路などは映像で物語ることができますが、人々の心を映像化することはできません。そんな時にこそリポーターの力量が試されるのです。これからもでき得る限り現場を踏み、そこに生きる人々と話すことで得られる“手触り感”を大切にしていきたいですね。

■視聴者の成熟で変わるメディア

このところ食品偽装など企業による不祥事が相次いでいます。嘘に嘘を重ね、結局すべてが明るみに出て廃業に追い込まれる……といった企業もありましたが、インターネットが普及し、内部告発が珍しくなくなった時代、嘘をつき通すことはできないと観念すべきでしょう。

むしろ最近の記者会見では、すべてを包み隠さず伝え、謝るべきところは謝るという企業が増えています。すぐ会見を切り上げるのではなく、メディアの求めた必要な数字や資料を用意する広報担当者も多く、企業のメディアに対する対応もスピーディーかつスマートに変わってきたなと感じる場面も少なくありません。

また視聴者のメディアに対する意識も成熟してきています。かつて芸能人のスクープを扱っていたワイドショーが情報番組に変わり、報道番組との境界線もほとんどなくなりました。視聴者の眼も非常に肥えているため、公正公平はもちろん、踏み込んだ取材をしなければ視聴率を上げることはできません。

多チャンネル化やネットの普及で既存のメディアが苦戦を強いられていることは事実ですが、「正確度」「成熟度」においてテレビは負けないという自負があります。さらにこれに加え、自分にしか出せない“手触り感”を武器に、大村にしか発信できないリポートを送り続けていきたいと思っています。(談)


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次世代マーケティング研究レポート 3
クリスマスには愛を…四季に合わせて五感を刺激するコミュニケーションを考える
NTTアド コミュニケーションプランニング局長 中山順文

この号が出るころには、クリスマスが近くなり、世の中はウキウキした気分で溢れていることでしょう。特に子供たちや恋人たちの目には、クリスマスをテーマにした商品やサービス、広告が数多く飛び込んでくる季節です。このように季節(シーズン)が人の気持ちに影響を与えるということは、四季のある日本において、皆さんも日頃感じることではないでしょうか。

最近、「五感を活用」という言葉がよく使われています。人は、季節によって感じ方が異なります。たとえば、春はウキウキ、夏はウンザリ(違う人もいるようですが)、秋は食欲、読書、そして冬は…。その結果、季節ごとに人が欲求する商品やサービスも異なってきます。それは季節が人間に与える心理的・生理的な影響が原因だと思われます。これらの心理的・生理的影響に、「五感」(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の5つの感覚)が反応し、それが気分や行動に影響を与えます。

季節変化の大きな要素としては、温度の変化(上昇・下降)が挙げられます。温度の変化により、草木は季節を感じ取り、花を咲かせ、実をつけます。人間も同じことといえるでしょう。前号では、人間の記憶形成には過去の経験が影響を与えるということに触れましたが、今号では、行動を起こさせる(購入喚起)ためには、企業のマーケティング活動も季節への配慮が必要であることについて述べさせていただきます。


図

■気温の変化は、人々の欲求の変化を生み出している!?

「五感」を活用した商品には、コカ・コーラのボトルデザイン(視覚・触覚)、クルマのエンジン音やドアの開閉音(聴覚)、食品の味やシンガポール航空の民族衣装や独特の香りなどさまざまあります。1つの感覚に訴求(体験)するよりも、複数の感覚に訴えることにより、より記憶に残りやすくなるとの考えにもとづいています。商品の機能的な差があまりなくなってきた今日、その他の要素での差別化が必要になり、「五感」を活用した差別化がブランド醸成に役立つといわれはじめています。

さて、話を本題に戻しますと「五感」を活用するにしても、季節を考慮することが必要になります。つまり感覚=生理的効果を促進するには、季節を鑑みた活動がより効果的になるのです。日本のように四季があり、それによって気分が変わるということを考えると、当然五感の活用の仕方も異なってきます。こうした考え方を取り入れている例として、シーズナルキャンペーンや店頭での商品構成があります。これは気温の上下が与える生理的影響により、欲求が高まったり低くなったりすることを活用しています。ビールの需要も気温と湿度に影響されるといわれています。季節(気温)が与える生理的影響が、人間の欲求や気分を変化させるというわけです。これはコミュニケーション活動においても言えるのではないでしょうか。人は暑い時期に細かい情報を得ようとはしませんし、涼しくなると「読書の秋」といわれるように細かい情報も得ようという気分になるものです。

■季節を考慮したコミュニケーションこそが効果を発揮する

基本的にコミュニケーション活動は年間を通じて季節変動の影響を加味したものでなければ効果的ではありません。例えば、色もそうです。暑い時期に暖色系の色はあまり好まれません(黒は紫外線を通さないのですが)。また、寒いときに寒色系の色は好まれません(青はリラックス効果があるのですが)。また、季節を感じる香りも異なります。あるクルマの販売店では季節に応じて香りの演出を変えているようです。

クリスマスはキリストの誕生祭ではありますが、「慈愛」=いつくしみの気持ち(家族への愛、恋人への愛)ということを演出することで人間の琴線に触れさせることができるのではないでしょうか。今でもこの季節には山下達郎の『クリスマス・イブ』がヒットチャートにあがったり、様々なアーティストが愛をうたったクリスマスソングを発表したりします。このように季節を味方につけたマーケティングやコミュニケーションは、効果的な活動につながるのです。


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OUR FINDER
広報が失敗を生かす
Text by 編集部

「ミスを隠されることが企業にとって最も痛手だ」と今号の特集で取材したキヤノン電子の酒巻社長は断言した。失敗が闇に葬られてしまえば、再発防止につながらない。そればかりか、隠す文化を醸成し、社内風土が悪化してしまうという。

「マイナス情報こそ大切にせよ」という危機管理の基本がある。社員の失敗や悪い見通しなどのマイナスな話は誰でも避けたいもの。特に部下が「こんな良くない話があるんです…」と上司に報告すると、「そんな面倒なこと、オレに持ってくるな。もっと景気の良い話は無いのか!」などと叱りつけることも珍しくない。わずらわしい上司は御免だから、部下はマイナス情報を報告しなくなる。

こうしたマイナス情報が上がってこない組織では、小さな問題が次第に膨れ上がって危険因子になり、最終的に企業危機に「成長」させてしまう。危機に「襲われた」多くの企業が、実は危機を「自らが招いている」とされる。

ある大手企業の子会社で起きた事故が報じられた。子会社の対応が悪く、メディアから批判を浴びた。親会社は寝耳に水だった。子会社の現場責任者を質したところ「親会社に報告したら大問題になると思った」「それに、親会社の広報の連絡先を知らない」。

失敗をはじめとする各種のマイナス情報を収集し、活用するのは企業コミュニケーションを司る広報部門の役目でもある。部門の垣根を越えた情報収集ルートや、「受け付けない上司」を飛び越して現場の声を拾う権限も確保しておきたい。社外に設置した通報窓口の対応では間に合わないケースも多いという。広報部門は、危機管理の社内横断チームや社内外の専門家と連携/先導して、マイナス情報に対処していくべきだろう。

今号の特集「失敗を語り合う風土づくり」は平穏時から取り組んでおく危機管理コミュニケーションでもあるといえる。広報部門こそ失敗を生かす手法を学んでおきたい。

このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第19号(2008年11月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

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