調査・研究/発行物

先事新聞 vol.16

「モノといつまでも」 今月のキーワード

メーカーや小売店に家電の修理を依頼しようとすると、「コレ、直すぐらいなら、新しいの買ったほうが安いですけどねぇ」などと、判で押したように忠告される。投資効率だけを議論するなら、筋は通っている。

しかし昨今は、エコ・ブームも手伝ってか、「何でもポイポイ捨てるのはもったいない」「安く済めばいいってもんでもない」というような気運がサキゴトだ。

当社の調査結果*から、長く大切に使っているモノのジャンルについて見てみると、「アクセサリー・時計」を筆頭に「衣」のジャンルが上位を占めている。特徴的なところでは、総合で下位につけている「ゲーム・おもちゃ」が、10代男性で46.0ptと平均の2倍以上となっている。また、自由回答を見ると、「モノを長く使うのはカッコイイ」「愛着のあるモノ自体が、自己表現の一つ」といった意見が若年層から聞かれた。ただし、「ボロボロなのはイヤ」なので、「ちゃんとメンテナンスはする」らしい。

グラフ:大切に長く使い続けているお気に入りのモノ

高級時計やバッグのブランドでは、何十年も前に購入した商品でもメンテナンスをやってくれるところが多い。親や祖父母から譲り受けた高級時計が部品の経年劣化で急に止まってしまったとしても、ブランドによっては、過去商品の純正部品を相当程度揃えているところがあるし、無くても代替部品で修理してくれる。中には「生涯保証」を謳っているブランドもある。これらの高級品は、そもそも長く使ってもらう前提で販売しているので、相談対応・修理・メンテナンス等といった「アフター・マーケティング」に力を入れている。ブランド・ロイヤルティの醸成やリピート購買の促進に効果があるといわれている。また、モノを大切にする消費者の気運に呼応してか、修理やリフォームを専らとするサービス事業者も増えてきているようである。

ともあれ、今回のレポートを通じて市場実態に関する皆さんの知見が少しでもリフォームされたとしたら、スタッフ一同、幸甚の至りである。

* NTTアド自主調査(インターネット調査、首都圏在住15~59歳男女500名、2009年9月4日~7日実施)

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モノの価値を自分で決める!
ロングライフマーケット。
■モノを長く使う? 買い替える?

いろんなものが容易にしかも安価で手に入る昨今では、ファストファッションのようにどんどん使い捨てにされる消費傾向が席巻し、やたらと目立っている。しかしその一方で、街には「お直し専門店」や「リフォーム」の看板がちらほら…。しかも、渋谷や青山のような街にはつい覗きたくなるような個性的な店まである。こうした業種をインターネットで検索してみると、身の回り品から住宅までさまざまなものに対応してくれそうな修理・リフォーム店がずらりと並び、なかには店舗検索ポータルサイトまである。実際に事業者数を調べてみると、衣服裁縫修理業者は全国で約9,000店にのぼる。また、建築リフォーム工事業者は過去5年で倍増の約10,000社に増えている。(平成18年事業所・企業統計調査)

■もったいないからだけじゃない!

もともと、革靴や万年筆、時計やバッグなどの高級品をメンテナンスしながら大切に使う人は一部の趣味人たちに限られてはいるが存在している。ただ、今はそこまで高価な品でなくても、気に入って使っているモノを上手に直して、ある意味新品を買った時と同じ(もしくはそれ以上の)満足感を得ているフツーの人たちが出現している。エコライフ志向や不景気の影響から「モノを大切にする」傾向もあるのだろうが、その消費行動の根底にあるのはただ「もったいないから」ではない。なぜならば、そこにはコストも時間も節約の感覚はあまり見受けられないからだ。

■お金をかけて生まれるモノへの愛着

たとえば、思い思いのリフォームを施せる古いマンションが、新築とはまた違う価値をもつ住宅として人気を呼んでいる。定番の靴修理にしても、街によくあるチェーンの修理店では納得できず、より専門性の高い修理ができる店を探して、時間もお金もかけて満足のいく状態にする20代~40代の人たちが増えている。モノが豊かで、何でも手に入りそうな今だからこそ、気軽に買い替えられる反面、ずっと大切にしたいようなモノにも出会えるチャンスがある。そんな状況から、お気に入りのモノをずっとお気に入りのまま使い続けるために行う「お直し」や「リフォーム」が、新たな価値観を持つ消費スタイルとして芽生え始めたようだ。

もと通りにしたい!お直し派
大切なモノだから、メンテナンス

気に入っているモノはよく使うから、当然傷みも激しい。だからといって、同じように満足できるモノは簡単に手に入らない。そんな時に「もと通りに直せたら」というニーズに応えてくれそうなのが専門の修理店。靴、時計、バッグ、貴金属など、インターネット検索で探してみれば、自分好みの修理をしてくれそうな店が結構身近なところに存在している。

修理ナビ
大切にしている洋服や時計、鞄、靴の修理について、その道のプロが悩みや疑問を解決する、ぴったりの専門家と出会えるポータルサイト。
http://www.repairnavi.net/
修理.COM
全国の修理店を地域別に検索できるポータルサイト。街の修理店と消費者を結んでいる。現在347事業者が登録されている。
http://www.shuuri-navi.com/
漆工房 ぬしや(陶器の修理、金継ぎなど)
大切な陶器の修理は金継ぎを含めて6種類。さまざまな修理方法で器をよみがえらせる。
http://po6.nsk.ne.jp/~nusiya/
シミ抜き職人の店 おしゃれ工房You友
「世界のブランド品を洗います」をキャッチコピーにブランドバッグから洋服まで、シミ抜きなどのクリーニング・修理などを行っている。
http://youyuu.or.tv/index.html
もう一度楽しみたい!リフォーム派
自分のセンスで、唯一無二の価値あるモノへ

少し時代遅れになってしまったり、ちょっと壊れてしまってもなんとなく愛着があって捨てられない。そんなモノに自分好みの要素を付加して、新品とはまったく違う価値を与えるのがリフォームの醍醐味。手軽にできるアクセサリーや洋服、家具などから、大きいものでは中古マンションや一戸建て住宅まで。自分でやるリフォームは趣味としても人気を呼んでいる。

D&DEPARTMENT PROJECT
ロングライフな家具、雑貨、ギフトを取り扱うセレクトショップ。ロングライフデザインについて考え、実験、実践する活動も行っている。
http://www.d-department.jp/
nu cafe(洋服お直し&カフェ)
洋服のお直し&リメイク専門店とカフェ。デザインリメイクなども提案してくれる。自由が丘らしい雰囲気で立ち寄りやすいカフェ付きの店。
http://nucafe.jp/
Good リフォーム.jp
中古住宅を購入して自分好みにリフォームするための情報を提供するサイト。デザインリフォームが得意な設計事務所なども探すことができる。
http://www.goodreform.jp/tokukaisha/search/03/
リフォーム工房 楽木
思い出のある家具を活かして、リフォームの匠が生活に役立つ家具として生まれ変わらせる。
http://www.cek.ne.jp/~rakki/reform/index.htm

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今回は、お直しビジネスの実態を探るべく、定番の「靴修理」とちょっと珍しい「傘の修理」のプロたちに、利用されるお客様の傾向などについて伺ってみた。

高見 雅治(たかみ・まさはる)氏

高見 雅治(たかみ・まさはる)氏
西武渋谷店B館5Fシューリペア工房(運営:株式会社インテックス)店長

オーダーメイドバッグの製造や修理、シューリペアに約8年にわたり携わっている。

「シューリペア工房」西武渋谷店~靴修理~
気に入った色の革が見つかるまで、じっくりと

「西武渋谷店に専門的な靴修理ができる店としてオープンして3年、年間約5,500件の修理を承っています。利用されるのは男性20~50代、女性30~40代が中心で、リピーターが多いのも特徴です。たとえば、オリジナルのソールの色や釘の本数までこだわりを持たれているお客様も多く、材料や修理方法などしっかりコミュニケーションさせていただいた上で、満足できる仕上がりを望まれる場合がほとんどです。なかには、他店を5軒も回って断られたのに修理を受けてもらえたと逆に驚かれたこともありました。修理費や時間とは関係なく『使えるようにしたい』とモノに愛着を持たれているお客様が多いことは実感しています」

秋山 利昭(あきやま・としあき)氏

秋山 利昭(あきやま・としあき)氏
神田の傘や(株式会社柏屋)代表取締役

傘を扱って30年、アンブレラマスター*のいる傘専門店で手作りの傘の販売や修理を手がける。修理はインターネットでも受け付けている。

*日本洋傘振興協議会が認定する資格制度。製品の種類、機能、素材、製造技術、正しい 使い方、ケア方法、修理時の対応などに精通している洋傘売り場のスペシャリスト。

「神田の傘や」~傘修理~
全国から1日平均3~5件の修理依頼あり!

「傘修理にかかる費用は平均して1,000~4,000円。それなりに修理費も時間もかかりますから、さすがにコンビニで売っているような傘を直す人はいませんが、大切な傘であれば事情はさまざま。『直してほしい』と都内に限らず、全国から問い合わせがきます。一番多いのは折れてしまった骨の修理ですね。中には水晶がついたとても高価なものを持って来られる方もいます」

※このコンテンツはNTTアドの情報紙『先事新聞』第16号(2009年10月発行)からの転載です。
 発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。
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