調査・研究/発行物

先事新聞 vol.15

「主夫になりたい」 今月のキーワード
今月のkey word 「変わりつつある、主夫スタイル」
■変わりつつある、主夫スタイル

ジョン・レノンは、ヨーコとの間に待望の息子ショーンが生まれた1975年から、約5年間も音楽ビジネスを休業した。「子育てに専念したい」というのがその理由だった。育児休業したハウスハズバンド(主夫)の先駆けである。

しかし昨今は、レノンのような一部のセレブリティではなく、極々一般家庭での主夫が先事だ。休日の公園でパパと幼児が二人だけで楽しそうに遊んでいる様子も、都市部では決して珍しくなくなってきたし、目端の利いた一部の事業者は、既にパパ向けの育児用品を市場に投入し始めている。

「ワーク・ライフ・バランス」の活動も大いに影響しているだろう。政府の作った行動指針には具体的な数値目標がいくつか挙げられている。そのひとつである「夫の育児休業取得率」は、2007年現在で0.5%のところを、 10年後に20倍の10%にと設定されている。現実的ではないとの反対意見もあるようだが、ノルウェーのように、男性の育児休業取得率が2000年時点で既に8割を超えている国があることも事実だ。

時代を遡って江戸時代では、育児に参加する父親は多かったようだ。幕末に来日した外国人は、父親がいかにも馴れた手つきで子どもをあやしている姿を「ごくありふれた光景」として見かけ、自国の風習との違いから大いに驚いたらしい。日本を「子供の楽園」などと表現し、大切そうに我が子を抱える父親のスケッチをいくつか残している。

当社のおこなった調査*では、「事情が許せば、主夫(婦)になりたいか」の質問に対して、男性でも28.8%と高い数字が出ている(女性の「主夫」賛成度33.6%)。特に「『妻は家庭を守るべき』という価値観にこだわりたくない」とする男性は、20代で26.3%と圧倒的に高く、平均値を押し上げている。他方、女性が主夫に賛成する理由については、20代の43.8%と約半数が「配偶者の家事に関する能力や技能が生かせる」ことをあげており、他の世代に比して抜群に高い。男性層の主夫に関する意識や能力の変化が察せられる。

主夫になりたい理由のグラフ

ともあれ、今回の先事新聞はこんな時勢に鑑み、我が国の「主夫の現在」に関する諸情報を読者のみなさんのために料理してみたのだ。

* NTTアド自主調査(インターネット調査、首都圏在住20~69歳男女500名、2009年7月3日~6日実施)

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明るい未来の主夫ライフ


■「主夫」希望者が増えている?

近頃、テレビや雑誌でもたびたび目にするようになったのが「家事をする」男たち。時に彼らは『家事男』などと呼ばれ、強くなった女性たちとは対照的に、野心など持ち合わせない草食系男子の行く末のように語られている。では、実態はいかがだろうか?平成17年国勢調査の結果をみると、仕事を持たずに主に家事をしている既婚の男性は約68万人。同調査で1,300万人以上いる同条件の女性(いわゆる専業主婦)に比べれば、まだまだ相当少数派である。

■「父親の育児休業」と「少子化対策」の関係

そんな中、最近注目されはじめたのが男性の育児休業。男女雇用機会均等法の施行に始まり、今や女性たちも責任あるポストについている。その結果、子育てで離職せざるを得ない状況はこれまで以上に女性だけのデメリットとして捉えられつつある。少子化問題が深刻化するにつれ、この部分でも男女差のない対応が求められ出したようだ。その点、海外では「父親支援」を国策として実際に取り組んでいるところも多い。たとえば、イギリスでは2003年から出産直後に1~2週間与えられる父親のための有給休暇が導入されている。また1993年にノルウェーが導入した『パパクォーター』は父親限定の4週間の休業制度。取得するとその間に国からの手当が支給されるためか取得率は非常に高い。その他スウェーデンは『パパの月』、ドイツは『親時間』など育児休業の呼び名を工夫することで、国民の意識変革へと働きかけている国もある。

■現実的な選択肢になる日も近い!?

日本でも内閣府の提唱する「ワーク・ライフ・バランス」が大きな後押しとなっている。男性が育児休業を取ることを積極的に進めている企業も出てきているため、上司から勧められることもあるようだ。以前なら「出世をあきらめても子育てしたい」という変わり者扱いだったが、これからは「充実した仕事観を持ち、育休が人生も豊かにする」という前向きな価値観へ変わりつつある。一生、専業主夫になるわけではないので、人生経験を広げる育休が仕事のスキルアップにつながるかも。エリート主夫たちが身近に存在する日も近いかもしれない。


仕事もできる男の育休型

企業もママも社会の風潮も、
育児を楽しみたいパパを支援!

企業に育児支援対策を求める「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」が施行され「男性の育休」が企業にもメリットになるしくみが整備されつつある。とはいえ、実際に育休を取るのはまだ少数派だが、父親の子育てを支援するサイトや雑誌、グッズなどは確実に増えている。


育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 [抄]
育児休業制度(法第5条~第9条)
労働者は申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができる(一定の範囲の期間雇用者も対象)。一定の場合、子が1歳6か月に達するまでの間、育児休業をすることができる。これに対し、事業主は要件を満たした労働者の育児休業の申出を拒むことはできない。

詳しくは厚生労働省HPへ
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/aramashi.html


妻の夢を支える支援型

高収入妻をもつ、男性版「内助の功」

才能あふれる女性と結婚した男性たちの中には「妻の夢を一緒に支える」タイプの専業・兼業主夫も現れている。いわゆる「内助の功」である。厚生労働省によると、男性の第三号被保険者(配偶者の加入している国民年金の被保険者)は1997年から10年連続で増加の傾向にあり、2007年度には約10万人に。この内訳がすべて専業主夫とはいえないが、妻に扶養される男性たちはこの10年で急増している。



■国がすすめる「ワーク・ライフ・バランス」とは?

平成19年12月18日、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表により構成される「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定された。これは仕事と生活が両立しにくい現代で、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たしながらも、家庭や地域生活などの場において、また、子育て期や中高年期といった人生の段階に応じて、多様な生き方が選択・実現できる社会」を目指すというもの。父親の育児休業取得促進も取り組みのひとつとなっている。

詳しくは内閣府HPへ
http://www8.cao.go.jp/wlb/

■父親の子育てを支援するサイトや雑誌など

■Fathering Japan(ファザーリング・ジャパン)

「仕事も育児も両立させながら父親であることを楽しみたい」という若い父親世代を支援するNPO法人。
セミナーやパパ検定なども実施している。
http://www.fathering.jp/


■Neo PaPa Club(ネオパパクラブ)

父親の子育て参加を応援するプロジェクト。 イベントや書籍、コミュニティづくりなどを通して「パパの楽しみ方」を提案している。
http://neopapa.jp/


■少子化対策プラスワン

子育てと仕事の両立支援により厚生労働省が推進する少子化対策。平成14年には「男性も含めた働き方の見直し」も盛り込まれている。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/09/h0920-1.html


■パパの育児休業体験記

内閣府が推進する「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みの一つで、育児休業に関する情報や体験記などを紹介している。
http://www8.cao.go.jp/wlb/change_jpn/taikenki/h20/


■FQ JAPAN(UK発のスタイリッシュ父親情報誌)

英国で父親の子育てバイブルとして人気を博し、2006年には日本版創刊。ジョニー・デップやベッカムなど世界のセレブの子育てインタビューなどカッコイイ父親像が満載。
http://www.fqmagazine.jp/


■AERA with Baby (0歳から子育てバイブル)
 Newsweek (0歳からの教育)

男性をターゲットとした子育て誌『AERA with Baby』や、ビジネス情報誌『Newsweek』で子育てをテーマにした特集号が発行されている。


■ダッドギアショップ(ファザーズバッグの通販)
http://dadgear-shop.ocnk.net/

■こそだてPapa Style(男の育児支援の情報サイト)
http://www.kosodate.co.jp/dad/

■DEAR DAD(父親悩み相談室)
http://www.fqmagazine.jp/pdf/10/deardad.pdf


パパ向け育児の市場調査

育児に関心を持つ男性たちが増えている現在、 市場にはどのような変化が起こっているのだろうか。 その実態を探るべく、育児用品の製造および販売を手がけるアップリカ・チルドレンズプロダクツ株式会社・マーケティング本部の山辺氏にお話を伺った。

山辺わか奈(やまのべ・わかな)氏 山辺わか奈(やまのべ・わかな)氏
アップリカ・チルドレンズプロダクツ株式会社
マーケティング本部 広告企画部 PR課 課長

マーケティング本部所属。新製品のリリース発信やメディアの取材対応を主として、アップリカブランドおよび製品のPR活動の全般を担当している。


1990年代

■育児はママの牙城。啓発してもまだ実態のない時代。

アップリカ社で最初に男性向け商品を手がけたのが1994年。しかしながら、旧厚生省の「育児をしない男を父とは呼ばない」という子育て支援社会を目指すキャンペーン(1999年)にも象徴されるように、実際にはまだ男性が育児をする時代ではなかった。そのため同社が男性向け商品を開発し、広告を展開するうえでも「子育てに対するやらされ感をいかに払拭するか」が最重要課題であったようだ。


現在

■男性にも似合うデザインで、「パパの子育て」をかっこ良く演出。

「ほんの5~6年前までは、マタニティイベントにパパの姿はほとんど見られませんでしたが、今はご夫婦での参加が多いですね。逆にパパのほうが熱心な場合もあるようです」(山辺氏)。その言葉を裏付けるように現在の商品はパパにもママにも似合うデザインのものが主流になっている。吉田カバンとのコラボレーションで誕生した色も形もシンプルなマザーズバックも人気の定番商品になっているそうだ。

■なぜ父親たちが目覚めたのか?

「海外のセレブや日本の男性タレントが、かっこ良く子育てをしてる姿を度々目にするようになったのも影響しているのでしょう」(山辺氏)。確かにブラピもベッカムも子育てが上手そうだし、楽しそうだ。今や子育てはママだけのものではなくなり、パパにもしっかりと役割分担の意識が芽生えている。


※このコンテンツはNTTアドの情報紙『先事新聞』第15号(2009年8月発行)からの転載です。
 発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。
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