調査・研究/発行物

コラム「広報に欠かせない法律の基礎」

個人情報・プライバシー・肖像権にかかわる法律の基礎~不注意による権利侵害を起こさないために~

あらゆる情報がデジタル化され、保存も複製も簡単にできるようになりました。それだけに、個人にかかわる情報には細心の注意が必要になります。広報活動でも日常的に取り扱う必要の多い個人情報やプライバシー、肖像など。今回は肖像権をめぐる留意点を中心に、個人にかかわる情報の開示について考えてみます。

縣 幸雄(あがた ゆきお) 大妻女子大学 文化部 コミュニケーション文化学科教授
明治大学大学院法学研究科修了。大妻女子大では「広報広聴論」「日本国憲法」「法学」を担当。
主な著書に『その広報に関係する法律はこれです』『憲法の条文を読んでみませんか』(ともに創成社)など

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■「自己情報コントロール権」の侵害に注意
■故人の肖像利用には遺族の許可が必要な場合も


■「自己情報コントロール権」の侵害に注意

 広報誌やWebページでの人物紹介は、個人情報、プライバシー、肖像を公表することです。個人情報とは生存する個人を特定する情報(学歴、職歴など)、プライバシーとはまだ知られていないその個人の生活上の事実(趣味、家族構成など)、肖像は写真、似顔絵、イラストなどその人の顔です。これらの情報は人格に関係する情報で、開示する範囲や内容を本人が決定する権利(自己情報コントロール権)がありますので、広報担当者は、印刷・アップロード前に本人の了承を得なければなりません。この原則は社内外に関係なくすべての人物紹介に適用されます。もし権利侵害があった場合、被害者の請求により裁判所は民法723条により名誉を回復するのに適当な処分、例えば謝罪広告や回収を命ずることになります。
  肖像権には、撮影された写真等の使用を拒否する利用拒否権が含まれます。例えば、研修会に参加した人物を撮影して紹介する場合、その紹介人物以外の姿が写っていても、その場にいる以上その“風景”に属するものであり、撮影されることには推定的同意があるとされますが、参加を秘密にしたい者にとっては、写真の公開は肖像権の侵害となるので、関係者以外が写っている写真は使用しない方が無難です。

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■故人の肖像利用には遺族の許可が必要な場合も

 写真よりインパクトが強いということで、本人の似顔絵・イラストを使用することがあります。宮崎県の東国原知事、大阪府の橋下知事などのイラストが食品の包装紙に利用されて話題になりましたが、イラストは肖像であり、描かれた画像の使用拒否をする権利がありますから、当然のことながら、知事の承認が必要です。また、人気モデルの表紙登用や自社へのタレント来訪記事など、広報誌やWebでの肖像利用では、タレント等が有するパブリシティ権に対し使用料を支払いますが、それを払えば無限に使用できるものではなく、使用条件を定めておくことが必要です。
 個人情報、プライバシー、肖像権は生存する個人の権利なので、故人の人物紹介は法的には自由です。ただし、パブリシティ権は遺族が相続するので、肖像の利用には遺族の許可が必要です。この権利の存続期間については法律も確たる判例もなく、著作権法51条を類推適用して死後50年ともいわれます。よほどの著名人でなければそれ以前にパブリシティ権は消滅していると考えられますが、無用のトラブルを避けるため故人であっても肖像利用には慎重を期すべきでしょう。
 

写真による人物紹介では、対象人物以外の人の肖像権にも配慮を!
このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第18号(2008年9月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

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