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コラム「広報に欠かせない法律の基礎」

危機管理にかかわる法律の最新トレンド 「内部通報制度」の運用で重要な社内外への広報活動 ~公益通報者保護法~

隠蔽していた不祥事が発覚すれば、企業の存在そのものが脅かされかねません。 そうした危機を未然に防ぎ、コンプライアンスを徹底するために、「内部通報制度」の整備が企業にとって不可欠なものとなっています。
企業不祥事にかかわる危機管理と広報の役割について考えます。

縣 幸雄(あがた ゆきお) 大妻女子大学 文化部 コミュニケーション文化学科教授
明治大学大学院法学研究科修了。大妻女子大では「広報広聴論」「日本国憲法」「法学」を担当。
主な著書に『その広報に関係する法律はこれです』『憲法の条文を読んでみませんか』(ともに創成社)など

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■不正行為を芽のうちに摘む
■内部通報は「もみ消し」の手段ではない


■不正行為を芽のうちに摘む

  不祥事がメディア等への内部告発で表面化すると、企業は社会から批判を浴び、場合によっては再起不能に近いダメージを受けます。そうした危機を避けるため、不正行為の早期発見や防止を目的とする「内部通報制度」を設置し、事業者内部での通報を勧奨する企業が増えています。2006年の「公益通報者保護法」施行も大きな契機となりました。同法は「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守」のためのものであり、通報先として、(a)事業者内部、(b)行政、(c)マスコミなど外部、と3段階で規定しています。内部通報制度は(a)を促すことで不正行為を芽のうちに摘み、(b)(c)への通報による壊滅的なダメージを防ぐという危機管理の意味を持ちます。また、内部通報を制度化することは、コーポレート・ガバナンスの強化にもつながります。

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■内部通報は「もみ消し」の手段ではない

 広報担当者は、内部通報制度が悪意の密告を奨励するものではなく、組織存続に必要な危機管理方法であることを社内に徹底しなければなりません。一方、その制度について社内外に発信することは、自社のコンプライアンス意識の高さを示すことでもあります。そうした広報活動をPR誌やWebサイトで行う際、次の2点の整理が必要です。
  まず、公益通報者保護法は、食品衛生法や建築基準法、電気通信事業法、電波法など、410余りの法令違反を対象としています。企業の事業分野によって関係する法令は異なるので、自社事業にかかわる法令を明記することが、適正な事業活動の内容をステークホルダーに理解してもらうためにも有益です。また、内部通報制度はその企業に勤務する正社員、派遣社員、請負契約などで業務にかかわる者などを対象とするものであり、社外の者からの情報提供を受け付ける制度ではないことを周知する必要もあります。もし内部通報窓口に外部からの情報提供があった場合には、消費者苦情窓口で対応するなど、通報者の理解を得ていきましょう。
  事業者内部での通報を「不祥事を外部に漏らさずもみ消す仕組み」と取る向きもあります。しかし、内部通報によって違法行為を未然に察知し防止した場合、それは、その企業の危機管理能力を示すものといえます。「もみ消し」という表現の当否は別にして、違法行為が防止されたので、それを公表しなかったとしてもコンプライアンス意識に欠けるとはいえないと考えます。ただし、状況によっては別に外部へ告発されることなども考えられるので、非公表のリスクも認識しておく必要があります。一方、犯罪行為があり、それを内部通報で是正した場合、企業には説明責任があり、広報による適切な情報開示が求められます。

「内部通報制度」は密告の奨励ではなく企業存続のために必要な危機管理手段
このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第16号(2008年5月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

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