調査・研究/発行物

コラム「広報に欠かせない法律の基礎」

CSRにかかわる法律の最新トレンド 他社も参加するCSR活動の広報は虚偽・誇大な表現に要注意

企業は会社の一員であり、ステークホルダーは企業の姿勢を厳しくチェックしています。
自社の利益ばかり追求する企業は、社会からの支持を失ってしまうことでしょう。
広報活動の重要なパーツであるCSR活動も例外ではありません。今回は「CSRと法律」の関係について考えてみます。

縣 幸雄(あがた ゆきお) 大妻女子大学 文化部 コミュニケーション文化学科教授
明治大学大学院法学研究科修了。大妻女子大では「広報広聴論」「日本国憲法」「法学」を担当。
主な著書に『その広報に関係する法律はこれです』『憲法の条文を読んでみませんか』(ともに創成社)など

INDEX >>

■事実の歪曲には社会的非難が
■フェアネスのない広報には違法性も


■事実の歪曲には社会的非難が

  文化活動の協賛、災害時のボランティア活動といったCSR活動は、広報活動の重要なパーツの一つです。これらの活動を広報誌の記事にする際は、事実を歪曲した情報操作・プロパガンダ型にならぬように注意することが必要です。 
  情報操作・プロパガンダ型の広報(自ら働きかけ自らの思う方向に他人や集団を動かすことを目的とした広報)を国が行った場合、民主主義の意思決定過程を歪めるものとして政治的に糾弾されます。たとえば湾岸戦争時における油まみれになった海鳥の写真発表、イラク戦争開始時における女性兵士救出作戦の報道などが、そうした観点から批判を受けました。また、広報と報道とは異なりますが、マスメディアが事実を捏造し「でっちあげ」写真を撮影するのは情報操作にあたり、真実を伝達する報道機関の責務に反するものとして、社会から厳しく非難されます。

↑このページの先頭へ


■フェアネスのない広報には違法性も

  これに対して、企業広報は、ステークホルダーの支持を得ることを目的とした活動であり、情報を加工しバイアスをかけた情報操作・プロパガンダ型の表現があっても、中傷誹謗や不法な商品宣伝がなければ、それは表現の自由として保障されています。したがって、CSR活動に関して虚偽・誇大な広報を行っても、それは市場で批判され自社のブランド価値を下げるだけであり、法的な問題は生じません。しかし、その活動に他社が参加している場合には、事実を歪曲し、活動の全部あるいは大部分を行っているような表現をすると、ながきにわたって積極的に取り組んできた企業に対する名誉毀損・信用毀損となる可能性があります。
  判例では、正面よりこの類のCSR活動の名声の横取りを法律問題として扱った例はありませんが、企業活動のフェアネスが要請される現在では、虚偽・誇大な広報には比較広告の法理が適用される可能性があります。比較広告とは「他社と自社の商品・サービスを比較し、自社の優秀性を主張するもの」であり、事実に反したことを述べ、その優位性をアピールすると、それは違法な広告となります。
  CSRは、Show the flagの場ではありません。活動に参加した他社の活動期間や義援金の額など、事実と異なる過小な数字を挙げ、自社の活動を誇らしげに吹聴する広報には違法性があります。他社の活動に言及する場合には、数字をはじめとする客観的事実に誤りがないように気をつけましょう。
“名声の横取り”には「比較広告の法理」が適用される可能性も!?
このコンテンツはNTTアドのPR誌『目黒発』第15号(2008年3月発行)からの転載です。
発行時から内容/見解/肩書などに変更のある可能性がございますので予めご了承下さい。

↑このページの先頭へ