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空気読本vol.20

インバウンド、次なるビッグトレンドは “おもてなしコミュニティ”?

「1月の訪日外国人、9.0%増の250万1500人 1月として過去最高」、2018年2月21日の日経新聞(電子版)の見出しだ。1か月で250万人という数字はかつてを知る人からすると驚異的な数字だ。30年前は、年間の訪日外客数が*200万人強であった。そして、2012年ではおよそ*840万人、2016年ではおよそ*2400万人と、たった4年間でおよそ3倍近くに膨れ上がった。「インバウンド」を耳にすることは多いが、とてつもなく急激に、日本の社会環境は変化を遂げている。 *出典:日本政府観光局(JNTO)

2020年の東京。訪日外国人の数もさらに飛躍的に伸びているはずだ。当然、われわれ日本人が外国人と接する機会も急激に増えることが想定される。

すでに、その兆候は表れている。訪日外国人と日本人が国際交流をするコミュニティが続々と誕生している。このような「外国人と日本人が日本で異文化交流するコミュニティ」を我々は“おもてなしコミュニティ”と名付け、今回の研究テーマとした。今後も外国人旅行者や労働者が増えることを考えると、このようなコミュニティはさらに拡大し、行動や消費を変えていく大きなポテンシャルを秘めている。今回、その可能性と拡大・活用のヒントを、定性インタビュー調査、定量アンケート調査から探った結果をお伝えしたい。

定量調査

  • 日本人の“外国・外国人”に関する意識・行動実態調査
  • インターネット調査(実査2018年1月12日)
  • 18~69才の日本人男女830s(全国)

定性調査

  • “おもてなしコミュニティ”の参加者・主催者への インタビュー
  • 4つの“おもてなしコミュニティ”が対象
  • 2018年1月中旬~2月中旬

Chapter1
2018年、“日本人から見た外国の今”
日本人の外国・外国人に対する意識や行動からみる7つの“国際交流”タイプ

①日本人から見たインバウンドの盛り上がりはポジティブだが、訪日外国人とどう接するのだろうか?

多くの人は、肌感覚でも身のまわりで外国人が増えていることを実感している。この一年の変化について、外国人旅行者が増えたと感じる人は81%、外国人の労働者についても71%が増えたと感じている。このことは多くの人がポジティブに捉えており、今後外国人旅行者が増えることについて61%が「いいことだと思う」と回答している。その理由としては、日本経済の成長、国際交流、地方創生・活性化への期待感がある。(各「期待する」70%、67%、66%)その一方で、訪日外国人をおもてなしするためのスキル、例えば英会話スキルについては日本人はかなり自信がない。8割の人が「英会話ビギナーレベル」を自負していると回答。その裏返しとして、「もっと英語を話せるようになりたい」という人は7割にも及ぶ。また、外国人と接することで「日本人である自分」を意識することも増えるだろう。現時点で「日本人であることを誇りに思う」が7割、その文化を外国人に伝えてあげたいという人もおよそ4割存在している。

“日本に来る外国人旅行者や、日本で働く外国人がここ1年間で増えたと感じますか?”

”日本に来る外国人旅行者が今後さらに増えることに対して、どう感じますか?”

“下記の観点について、それぞれ訪日旅行の増加に、どの程度期待していますか?”

②今どきの海外の捉え方、日本にいても世界とつながる

海外については、今の日本人はどう捉えているのだろうか。図をご覧いただきたい。旅行先としては好きだが、住んだり、働く場所ではないという認識だ。言葉のかべもその背景にはあるかも知れないが、グローバルで活躍するようなワーキングスタイルは、まだまだ限られた人のものということだろう。

かつて、西欧は目指すべき憧れの対象だった。文化面での憧れの国を聞いたところ、今でもイタリア(35%)、フランス(32%)、アメリカ(30%)と西欧諸国が高く、逆にアジア諸国は総じて低い結果。一方で、年代によって大きな差が見られ、20代以下の若い層では、特に韓国文化への憧れが見られた。若者の間でオルチャンメイクなど韓国カルチャートレンドが流行っている記事を目にすることがあるが、「外国人や海外に影響を受けて買ったものやサービス、行ったイベント」の回答でも、韓国コスメ・ファッション・K-POPが挙げられた。

この背景として、Instagramなどの非言語的なつながりをサポートするツールが若い層に普及したことや、韓国の美容、ファッションなどが「インスタ映え」するためそういったツールとの相性がよかった点も考えられる。「『カワイイ』『カッコイイ』等の感性が自分と近い人とつながりたい」「言葉がわからなくても、動画や写真でつながりたい」などの意識も20代女性では過半数を超えており、わかり合うのに必ずしも言葉に頼る必要はないという認識だろう。

③国際交流のニーズ、“おもてなしコミュニティ”参加率は、現時点でも約2割に上る

言葉のかべは依然としてあるものの、「外国人旅行者におもてなしがしたい」という人は3割程度存在している。具体的には、以下のような内容だ。「おもてなしというか、困っていたら助けたり、案内したい。(22才女性)」「懐石料理の盛り付け、器の美しさを堪能して欲しい。和服の美しさを見て欲しい。(64才女性)」「日本のローカルな日常を体験して欲しいので、普段日本人同士で遊ぶように普通に遊びたい。(36才女性)」「英語で道案内をしたり、ホストファミリーになったりしたい。日本酒を一緒に飲めたらいいなあ(43才男性)」。困っている人を助けたい、日本の文化を伝えたい、交流したいという気持ちが見られる。「外国人の友だちをたくさん増やしたい」「リアルに交流したい」という人は3割以上おり、実際に外国人(旅行者に限らず)と日本人が国際交流する“おもてなしコミュニティ”に参加している人はなんと約2割※注もいる。
※注:18.2% 下記のコミュニティ・イベントに「参加することがある」と回答した割合

“おもてなしコミュニティ”にはいくつかタイプがある。アウトドアや祭りなどのイベントを楽しめるコミュニティ、一緒にお酒を飲んだり食事をするパーティ・お店、外国人と交流して英語力をアップするコミュニティ、街中で困っている外国人をサポートするボランティアなどだ。調査結果によれば、参加率が高かったのはイベントや食のコミュニティだ。参加意向は15%前後となっており、今後の拡大も見込まれる。(図参照)

④国際交流のとらえ方と7つのクラスタータイプ

いったいどのような人が“おもてなしコミュニティ”に参加するのだろうか。今回、海外や外国人に関する意識を30項目聴取、因子分析、クラスター分析を行った結果、国際交流に対する考え方のタイプについて、日本人は7つのタイプに分類できることがわかった。

今の日本の状況は、外国人が急に押し寄せてきた、言わば「黒船来航」の状況と似ていると言えるだろう。そのため、7つのタイプを幕末の志士になぞらえ、その特徴を「士」で表した名をつけた。「おもてな士」「シンパ士」「ボーダーレ士」「伝道士」「あさきゆめみ士」「クライシ士」「無士」の7つ。それぞれの特徴をみてみよう。

おもてな士(構成比:18.4%)
「おもてなししたい」47.7%

実際に “おもてなし”を行っている人たち。海外志向が強く、外国人旅行者のおもてなししたい気持ちが最も強い。様々な“おもてなしコミュニティ”への参加率も最も高い。ホスピタリティだけではなく、“外国人旅行者と関わって、収入につなげたい”も高い。属性としては男性20~30代が多く、海外留学、在住経験者が多い。英会話スキルも高く、日常会話レベルやビジネスレベルの人も多い。

シンパ士(構成比:15.2%)
「おもてなししたい」46.0%

一言でいえば、シンパシー。海外志向は低いが、外国人旅行者とわかり合いたい。一緒にスポーツイベントなどを楽しんだり、日本文化を教えてあげたい。困っていたら助けてあげたい。イベントを一緒に楽しめるコミュニティの参加率が高い。

ボーダーレ士(構成比:17.3%)
「おもてなししたい」38.2%

国境にとらわれず、ボーダーレスに活躍したい人たち。海外志向がとても強く、海外生活を志向している。英語を活用して、もっとグローバルに交流や仕事を広げていきたい。そのため、英語力向上コミュニティの参加率や意向が高い。

伝道士(構成比:19.3%)
「おもてなししたい」23.8%

日本文化の伝道師。日本人としての誇りが強く、日本の文化を伝えたい人たち。一方で、おもてなしコミュニティへの参加は少ない。50代以上の人が多い。

あさきゆめみ士(構成比:9.4%)
「おもてなししたい」10.3%

海外生活に憧れ、外国人が好きな人。おもてなしコミュニティへの参加はまれ。20~40代女性が多い。英会話スキルは低く、あまり国際交流にリアリティを感じていない様子。外国人が好きというのも、ハリウッドスターなど画面の向こうの世界という認識なのかも知れない。

クライシ士(構成比:7.1%)
「おもてなししたい」3.4%

クライシス、つまり外国人が増えることを“危機”だと感じている人たち。外国人が嫌いな人が多く、外国人が増えることにネガティブ。「職場の同僚に外国人がいる」という回答が多く、その刺激を受けてなのか外国語がもっとできるようになりたいと考えている。外国人が好きではないが、街中ボランティア、英語力向上コミュニティの参加率がやや高いのが特徴。

無士(構成比:13.3%)
「おもてなししたい」2.7%

外国人の存在を無視。海外も外国人も興味なし、あるいは嫌いな人。おもてなしコミュニティへの参加はほぼなし。英会話スキルもない。

各タイプを2軸でプロットしてみた。縦軸が「おもてなしがしたい」、横軸が「もっと英語を話せるようになりたい」とした。円内の数値が“おもてなしコミュニティ”の参加率だが、結果は明確で“おもてな士”の参加が断トツに高い。現在参加している多くは、このタイプだと考えられる。一方で、“おもてなしコミュニティ”がさらに拡大していくためには課題があると言えるだろう。参加の仕組みや参加したくなるモチベーションづくりだ。横軸の英語が話せるようにというのがその一つだろうし、他にも金銭的なインセンティブやひと助けできることなどが考えられる。次の2章では、“おもてなしコミュニティ”の主催者や参加者にインタビューを行った結果と、拡大のための仕組みやモチベーションについて深掘っていきたい。