わが国では、高度経済成長期からバブル期に至るまで「日常の24時間化」が急速に進んだ。お馴染みリゲインの広告「24時間戦えますか?」シリーズの初出稿は1989年で、バブル景気の開始に同期している。またこれは「夜の開拓」と言い換えることもできるわけで、同じ頃テレビ番組の深夜帯化が進み、ほどなくして放送が24時間化されていった。
しかし昨今は、早寝早起きして朝の時間帯を有効活用する「朝活(アサカツ)」がサキゴトだ。
たとえばその深夜番組だって、最近のハードディスクレコーダーは大容量だから、見たい番組を予約録画しておいて、朝起きてからゆっくり見ることもできる。古代中国では重大な政治的決定は早朝に下したらしいが、よく知られているように、人間は本来夜よりも朝の方が心身の能力を発揮しやすいようだ。
ここ数年「ソトアサ(朝食を自宅外でとる)」「席朝族(朝食を出社後に会社の席で食べる人々)」などという言葉が聞かれた。これに関連して「朝専用」の缶コーヒーがヒットしたし、「朝カレー」「朝チョコ」等と様々な商品の上市が続き、この業界ではちょっとした「朝ブーム」である。
当社の行った自主調査*でも、「最近朝型生活に変わった」と回答したのは全体の59.9%と高く、「変わりたい」の31.3%を加えれば、朝型生活肯定派は9割以上になる。変更意向では特に20代が目立っている(全体平均31.3%に対して38.7%)。
肯定理由は「健康によい」「エコにつながる」等。また、20代男性で「いろいろな人と効率的に出会えるから」といった声もあがっており、近年増えている「朝活コミュニティ」への受容性もうかがえた。
朝活する人が増えれば、付帯サービスの提供も求められる。現在よく利用しているものは「コンビニ、スーパー」「金融機関」「カフェ、ファストフード」等だが、今後期待されるものには「朝市、直売所」、「スポーツジム・クラブ」「銭湯・温泉」等があげられている。
ただし自由回答では、肯定的な意見が多い一方で「無理やりブーム化されるのは気分が悪い」「したくてもできない人だっている」といった意見もあり、商機として活用する際は相応の注意を要する。
ともあれ、今回の先事新聞も、脳力が最大化している朝の時間帯にお読みいただければ、スタッフ一同幸甚の至りである。
* 早朝サービス16項目を提示し、現在よく利用しているもの(=現利用)と今後利用したいもの (=利用意向)をそれぞれ複数選択してもらい、利用意向と現利用のポイント差を、各サービスへの「期待度」と定義した。集計結果から、期待度の高い上位10項目をグラフ化した。
* NTTアド自主調査 (インターネット調査、「最近朝型生活に変わった」と回答した、首都圏在住
20~59歳男女400名、2009年11月11日~12日実施)
今どき朝活事情
■早起きは三文以上の徳だった!?
早起きはイイコトだとわかってはいても、なかなか実行できない。そんな風潮が最近は変わってきているようだ。今、20代~30代の若い世代の社会人たちを中心に広がっているのが「朝活」である。出勤前の1~2時間を利用する、早朝セミナーや異業種交流会などが各地で開催され、
朝から意外に多くの人を集めている。たとえば、丸の内では3年前から『朝EXPO in Marunouchi』という早朝イベントが開催され、昨年の春には2万2,000人もの参加者が集まったそうだ。その後、継続的に開催されるセミナーとして形を変えて今年の春に誕生したのが『丸の内朝大学』で、月~金まで食・健康・環境など多種多様なテーマを提供し、朝から何かを学べる場となっている。
■若い社会人を魅了する朝型コミュニティ
また、mixiやGREEなどのSNSを通じて輪が広がっているのが『銀座breakfast倶楽部』だ。20代後半~30代前半の独身男女が大半を占めるコミュニティで、カフェで朝食を食べながら同世代の仲間と雑談をする。この集いはアメーバのように各地に飛び火して、今では首都圏を中心に名古屋や福岡まで20エリア、参加者は延べ3,000人に上る。他にも読書会や築地で食べる朝食会、婚活など、テーマが明確なものもあり、いずれも人気を集めている。
■昼でも夜でもない“朝が生み出す価値”
一度参加すると意外にハマる、リピーター率が非常に高いのも「朝活」の特徴だ。参加者に話を聞くと「朝型生活にシフトしたくてジョギングや朝食づくりを始めたが続かない。ところが朝食会に参加してみたら続いたんです」という。一人じゃ辛い早起きも、みんなでやれば楽しみになる、ということのようだ。また、朝だからこそ生まれる新しい価値もある。始業前だから時間制限があり、かかる費用も朝食代の500円程度。夜の交流のように愚痴を言いながらダラダラ過ごすこともない上に飲み代もかからない。満員電車も避けられて、オフィスに行く時間も早まり、仕事もはかどる。ここでの交流が仕事に役立ったり、転職や将来の伴侶との出会いにも発展している。ちょっと早起きしてみたら、三文の徳どころか結構大きな価値を生み出しているようだ。「朝活」で日常生活から一歩抜け出し、スマートライフへ。健全でさわやかなイメージの「朝」は、案外魔法のキーワードなのかもしれない。
■読書朝食会“Reading-Lab” http://reading-lab.mindia.jp/
加藤 健(かとう・たけし)氏
読書朝食会“Reading-Lab”主宰
慶應義塾大学を2006年に卒業後、株式会社クイックに入社。マーケティングや営業、採用のプロジェクトリーダーとして業務に邁進する一方、プライベートでも約2年前に読書朝食会“Reading-Lab”(通称・リーラボ)を東京で設立。全国で1,300名以上が参加し、毎月多数のメディアに取り上げられる日本最大規模の読書コミュニティへと成長させる。
「本」×「朝」×「仲間」がキーワード
平日の出勤前、約1時間を利用してオススメの本を紹介しあう読書朝食会。休日は著名人の講演会や著者のワークショップなどイベントつきの読書会も開催。参加者の多くは20代後半~30代で、平日は5~20名ほど、休日は100名を超える規模になることも。「本からの知識を深めたい、プレゼンの練習、自分にない視点に触れられる、著者・社外の人と知り合える、朝時間を有効活用できるなど、不況の影響もあってか、自己啓発的な目的で参加されている方が多いようですね」(加藤さん)
■BNI*雅(みやび)チャプター http://miyabi.farietta.com/
中山 圭太郎(なかやま・けいたろう)氏
BNI雅チャプター主宰
株式会社ディー・ブレインFAS パートナー中山データベース合同会社 代表社員
公務員だった頃に3年間『銀座breakfast倶楽部』の運営をつとめ、そこでの出会いをきっかけに起業し結婚するなど朝活が人生のターニングポイントに。現在は『銀座 breakfast倶楽部』を卒業し、ビジネスに直結した経営者のための朝食会を主宰している。29歳。
*BNIという世界最大の異業種ネットワークの運営プログラムに則り、効率的で効果的な異業種情報の交換を行う。BNIの理念は“Givers Gain”(与える者は与えられる)。
若き経営者のための異業種交流を目的とした朝食会
『銀座breakfast倶楽部』の2代目運営者であった中山圭太郎さんが今年の夏に立ち上げたもの。ホテルでリッチな朝食をとりながら約20名の参加者が毎週互いにプレゼンし、ビジネスチャンスを見つけるしくみ。半年間で欠席は3回までと厳しい参加条件はあるものの、毎月5~6件は何らかの成果が生まれているそうだ。「経営者とはいえ、週1回が継続できるのも朝食会だから。1回が継続できるのも朝食会だから。1回2,000円程度の参加費で有意義な交流が図れます。『銀座breakfast倶楽部』にしても参加者が求めているものの根本は同じかもしれません。参加者の中心である20代後半~30代は会社の中ではミドル世代、人脈が必要と気づき始める世代なんですよね」(中山さん)